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千早は額の上に乗せていた手を差し伸べてきた。すぐに意味を察して新はお互いの指を絡め合うようにその手を握る。片手しか使えないのは少々不便だが、新は千早の片足を抱えて自分の肩に載せながら上体を倒す。千早は残る片足を新がそうしたように、新のもう一方の肩に足首を載せながら、新の体重に逆らわないように身体を二つ折りにする姿勢を取ってくれた。 「……窮屈でないか?」 千早は小さく笑って平気だと呟く。新は自由が利く片手で千早の入口に分身をあてがってから床に手を付き、少しずつ体重を掛けながら千早の中を割り進んでいった。 「あ、あ……あっ、ああっ!」 両足を抱え上げられているせいで、より深く自分の中に新が入り込んでくるのを感じ、千早の口からいつもよりはっきりとした喘ぎ声が紡がれる。それに気を良くし、新は腰を送り始めた。 「やぁ、んっ、新、あらたぁっ……な、んか……凄っ……あんっ!」 新が動く度に切れ切れの声を上げ、千早はしきりに首を左右に振って感覚の奔騰を堪えている。 「千早……我慢、せんでも、いいんやざ……」 さっきから新が動くたびに千早の腰も合わせて動き、新をリズミカルに締め付けている。体重を支えていた膝の位置を少し変えようとして、繋がったままの新の腰がそれまでと違った角度で千早の中を擦った。 「ひぅっ……!」 千早の反応がまた変わる。 (今の、気持ち良かったんか?) 確かめてみたくなり、新はもう一度同じ角度で腰を動かしてみた。 「っ、ああんっ! や、やだ、新ぁ、それ……そんなにしたら、私すぐ、いっ、ちゃうってば、ああっ、んっ」 「……いいんやざ? 何べんでも。……おれかって、その方が……嬉しい」 宥めるように言い、新は今見つけた千早の感じやすい所を狙うように腰を送り続ける。千早の締め付けがきつくなり、新を奥へ奥へと引き込むように中が蠢き出す。新もぐっと奥歯を噛んで堪えていないと放ってしまいそうだった。 「あ、あ、やっ、だ、ダメぇ……気持ち、良すぎて、っああ……っ、ダメっ、ダメえっ! ……あ、あああ───ッ!」 弓のように千早は汗で光る身体を大きく反らせ、下肢を何度も引きつらせて頂点に達した。一気に脱力した身体は布団の上に落ちて、荒い息を吐いている。 (千早、今の……凄かった……) どうにか放出は堪え切れた新は、再び抽送を開始した。千早が達した後だけに、動くたびに溢れた蜜がいやらしい音を立てていて、繋がったそこだけでなく、動くたびに揺れている千早の胸や、その水音で新の快感のボルテージが一気に高まってしまう。 「えっ? ああんっ、ヤダ、ダメぇ……っ、また、っちゃうよ……っ」 「……何べんでもいいって言うたが。……おれかって……そろそろ、ヤバい……気持ち良すぎや、千早の中……」 今度は一転して全身のバネを利用して新は千早の中を大きく行き来すると、新の内圧もあっという間に限界近くまで押し上げられる。 「んんっ、あっ、ああっ、ダメっ! また……来、そう……っ!」 繋いだ手を千早がぎゅっと握りしめて頂点が近いと言葉以上に教えてくれる。 「千早、千早っ……! おれ、も……っ!」 新の動きが限界まで速まると、肩に担いだ千早の脚がぴんと伸び、腰と盆の窪で体重を支え、一段と大きく仰け反った。 「新っ、お願いっ、もう……っ、───ンッ!」 身体を震わせながら頂点を告げる千早の声を耳にし、新は必死に堪えてきた放出の欲求を解放した途端、腰が大きく震えた。 「千早……っ! ……っく、……う……っ」 新の穂先から、脈を打って熱が迸る。全てを吐き出し終えた新はがっくりと千早の上に倒れ込んだ。 「ん……はぁ……、っはあ……」 千早も荒い息を吐き、新を身体の上に乗せたままぐったりとしている。 「……重たいやろ……今、退くで……」 そう言う新ものろのろとした口調で、試合直後以上の消耗を見せていた。辛うじて上体を起こして千早を自分の重さから解放し、隣にどさりと寝転がる。 「はあ……なんか、フラフラや」 「うん、私も……」 千早がころんと寝返りを打って新の胸に頭を乗せてくる。新は腕を回して千早の肩をそっと抱いた。 荒かった呼吸が元に戻りだし、ようやく新は言葉を発した。 「さっき、誕生日とか将来祝うんかって言うてたが?」 「……うん」 こんなのどうやろ、と新は言葉を継ぐ。 「おれも千早もかるた続けるし。……ほやで、子供連れて練習場、まあ南雲会やろけど行って。軽めの練習したら三人でケーキでも買うてさ。うち帰ったら一緒に食べる……とかどうや?」 「いいね、それ。プレゼントは先に買って家の中に隠しておけばいいし、こっそり予約しておけば『おたんじょうびおめでとう』ってプレートもケーキに乗せられるし」 肩口に頭を乗せたままで千早は新の顔を見上げて笑う。 「おれ、かるたではじいちゃんが目標やし、取りもじいちゃんがお手本やけど。……原田先生に負けてから、思うようになったんや。じいちゃんのかるたの良い所は残しながら、おれのかるた、っていうのも持たなあかんなって」 新は穏やかに笑ったままさらに言う。 「おれが親になるとこってまだ想像も出来んけど、父ちゃんとじいちゃんみたいな喧嘩はしとないって思う。ほやし、二人とはまた違った親になりたいって、ちょっと思った」 千早は俯せるように身体の位置を変え、顔を上げてきた。 「私がかるた始めてしばらくの頃さ、お姉ちゃん撮影とかで忙しくて、お母さんもお姉ちゃんにかかりっきりで。あんまり話聞いてもらえなかったんだ」 千早は少しだけ寂しそうな目で、当時を話し始めた。「かるたを続けている限り千早は大丈夫だ」という母の本心を聞けたのは高校生になって、自分の袴を母が買ってくれた時だ。 「……中学生になって、C級に上がった時にね。京都大会に出ないかって原田先生が言ってくれた事があったんだ。京都ならもしかして新も出るかもって思ったから行きたかったんだけど……お姉ちゃんの仕事に付き添わなきゃいけないからって」 C級昇級を知らせる手紙は千早から当時受け取ったが今言ったような事は手紙には一度も書かれていなかった。新が読んでも心配しないように、千早はちゃんと気を遣ってくれていたのだ。胸の裡に暖かい物を感じ、肩に回す手に少し力を入れた。 「でね。私も自分が親になるなんて、まだピンと来ないのは一緒だけど……その子の話はちゃんと聞こうって、決めてるの。もしもそれが、その子がかるたをやめたいって話でも」 千早はすっきりと笑っている。寂しさや悲しさを昇華させて、自分の夢に繋げているその笑顔は美しいと新は心から思った。 「千早は、凄いな。きっとなれると思うざ、そういうお母さん」 「……でもカレー焦がしちゃうけど」 新の言葉に照れたのか、千早はそんな事を言う。 「おれがかき混ぜとくで、だんね(構わん)」 おれこれでも自炊してるんやぞ、と冗談めいた口調で新が言うと、千早も可笑しそうに笑う。 (誕生日の話で思い出したけど……千早の誕生日、もうすぐやったな……) この部屋でカレーでも作って祝おうか。新はそんな事を考えてふっと笑った。 |