4.5(3)
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「……あっつい……」 ようやく全てを吐き出した新は額の汗を手の甲で拭う。とにかく後始末をしなければ、と部屋の中に視線を巡らせるが、あれだけの量が溢れ出たというのに畳の上に目立った汚れがない事に今更ながら気がついた。 「え……? 嘘、やろ?」 顔を上げた千早が手で口元を拭っていた事で、それが嘘ではないと分かり、大慌てでバスタオルを掴むと膝で千早の側ににじり寄った。 「千早、タオルの上でもいいで口から出しねって……不味いやろ、ほんなもん」 「……ん、平気」 声が出せるという事は、すでに飲み込んでしまったという事だ。新はどう言えばいいのかと頭を掻く。嬉しいのか気恥ずかしいのか、或いは千早に申し訳ないのか、新の中の感情が目まぐるしく変わる。 「平気だよ。だって新のだから」 照れたような笑みを浮かべた千早を見た途端、新の胸が切なく疼いた。愛おしくてたまらない千早を膝立ちのままきつく抱き締めた。 「大好きや……千早」 「私も。かるたの時の流れる水みたいな新も好き。照れてる時の新も、こうしてる時の新も、みんな好き」 千早の腕が新の首に回されると、裸の身体がぴったりと触れ合う。新の胸板で押しつぶされている千早の柔らかな乳房の感触に、またぞろ新のものが頭をもたげ始めた。節操のない分身をどやしつけたい気分で新は身体を離そうとしたが、千早は腕を解こうとしない。 「……いいよ、新。……私にだから、なんでしょ?」 「そうやけど……疲れて、えんの?」 問い掛けに答える代わりに千早は腕の中で静かに目を閉じた。 千早の息さえ奪いそうな深いキスを新は繰り返す。唇を奪いながら片手で千早の花弁を探り当てると、襞を割って指をそっと潜り込ませた。 「んっ……あっ、そ、こ……。何か、ここに……響く……。きゅんって」 心臓のあたりを片手で押さえて千早は恥ずかしそうに伝えて寄越す。 「……ここ?」 同じ場所を新は指先で軽く擦り上げてみた。途端に千早の背が柔らかく撓る。 「んっ、……意地悪……っ、ん……や、ぁ……」 くちゅくちゅといやらしい水音が鼓膜に届く。だんだんはっきり聞こえてくる音に千早は顔を赤らめてはいるが、さっきのように無理に堪えようとする素振りはない。新が支えている細い腰が、指の動きに合わせて揺れ始め、新の指を締め付けてくる。 「……あ、あンっ……新……っ、んっ……」 膝立ちの姿勢では辛そうだと、新は一度指を抜いて千早を床に横たわらせた。とろとろ溢れた蜜で光っている指先をタオルでそっと拭うと、カラーボックスに置いてある救急箱の蓋を開け、東京に越してきた時買っておいた常備薬を掻き分けた。箱の底に隠して置いた試供品のコンドームを一つ取り出して装着すると、千早の側に戻ってきた。 新が近くに座った気配を感じて千早は薄く目を開く。快感で潤んだ目尻にうっすら涙を滲ませた表情は普段の元気な彼女とは違った魅力で新の心を強く揺さぶってくる。 「千早……入れるざ?」 千早は一度だけゆっくり瞬きをし、新に視線をまっすぐ合わせてこくりと頷く。それを受けて新は千早の脚の間に身体を滑り込ませ、しとどに濡れたそこに欲張りな分身をあてがうと、蜜と潤滑剤の滑りを利用して一気に根元までを潜り込ませた。 「っあ、あんっ……あっ、あ……」 千早の上げる声が甘いトーンを帯びる。舌足らずの子供のような、可愛らしい喘ぎを繰り返しながら、千早の両手が何か縋る物を探すように伸ばされる。新はその手を力強く握り、片方の手で千早の腰を掴んで安定を取ると、ゆっくり腰を送り始めた。 「……んっ、あん、新……新っ……」 一声啼くごとに千早の中はきゅっと新を締め付けてくる。さっきあれだけ放って余裕があると思っていたが、こんなに熱くて柔らかく、それでいて全体をきつく包み込む千早の感触の前に、そんな余裕はまるで波打ち際の砂の城同然の脆さだ、と意識のどこかで新は思う。 「千早……っ、すご……」 無意識に呟いたらしい。繋いでいた手を千早にきつく握り返され、新は千早の顔に視線を戻す。 「……新、だから……んっ、新、に……される、と、き、もち……いい。……すごく、気持ち……いい、の……」 千早が感じる様を目でも堪能したいという欲などどこかに消し飛んでしまう。両手を一旦放して千早の上に覆い被さると、新の温もりを喜ぶように千早が腕を回してきた。 「千早、千早……好きや、おれ……千早が、好きや」 「っ……あ、わ、た……しもっ……、新……新、す……き……っ」 好きだという短い一言は、心も身体も繋がっているという多幸感をこれ以上ない形で伝えて寄越し、また同じだけの気持ちを投げ返す。昂ぶった感情が二人の身体からブレーキを失わせ、ただひたむきに互いを求めて止まらない。 「……あっ、も……ダメっ、新ぁっ、新っ、また……また、来……そう……っ!」 先に限界を訴えたのは千早の方だった。溺れる者のように新にしがみつき、玉のような汗を光らせてどうしようもなく身をよじる。感極まった声が新の水位を一気に押し上げた。 「おれ、も……や……。っく……千早っ、っあ……も、あかんっ……!」 「新、新っ……、やっ、ああっ、ん、……っ、───ンっ!!」 新と千早の二人しかいない真っ白な世界の中に二人の意識が同時に爆ぜて、飛んだ。 「はぁ、はあ……っ、はぁ……」 新のこめかみから滝のような汗が滴り落ちる。頭を動かすと、前髪の先からもぽたぽたと雫が千早の上に降り注いだ。 「あ……ごめん。拭くわ」 のろのろとバスタオルを手に取り、新は千早にかかった汗を拭い、自分の顔もぐいと拭く。 「へいき……」 千早の口調もいつもより間延びしているが、それもむしろ可愛らしいと新は思う。身体を離すのは勿体なかったが、のし掛かったままは千早が重いだろうと両腕の力でどうにか上体を持ち上げてごろりと脇へどいた。 まだ呼吸が収まらない千早がころん、と横向きの姿勢になると、肩甲骨のあたりが畳で擦れたのかうっすら赤くなっているのが新の目に留まった。 「背中、痛かったんでないか? ……赤くなってもてる。……ごめんな、気ぃ付かんかって」 背中をそっと指先でなぞりながら新が謝ると、千早は寝返りを打って新の方に向き直った。 「ううん、痛くない。……新、謝ることないのに……」 「ほやけどさ……ん、いや……今度からは、布団出すようにするでの……って、おれ何言うてんにゃろな」 急に気恥ずかしくなって新は頭を掻く。そんな仕草が妙に可愛く見えて千早は小さく笑った。 新は起き上がって下着とジーンズを身に着ける。ふと視線を感じて振り返ると、同じように下着姿の千早がじっと新を見ていた。 「な、なんや千早……ひとの事ほんなじっと見て……なんか変か? おれ」 「え? あ、ううん違うよ。……新って細いのに背中は大きいなあって思って、見てただけ」 背中が大きいと言われても、正直自分では直接見えないだけによく分からない。 「ほうなんか? ……素振りとかでそれなりに身体は出来てきてるんかの。それやったら嬉しいんやけど」 新はいつもそうするように、右手を振った。空気を切る鋭い音が鼓膜に届く。 「新って素振りどのくらいやるの?」 やはりお互い「かるたバカ」と言われるだけあって、素振りの話題の前にはどちらも半裸だという事さえ忘れそうになる。 「今は……って言うか南雲会戻った後からやけど、一日五百回や。キツいけど、サボると覿面やし」 答えながら千早はどうなんやの、と聞き返す。 「素振りって言うか、試合のDVD見ながら取ってるよ。クイーン戦とか、新と詩暢ちゃんの試合のとか。回数は数えてないけど……大体一回戦から決勝ぐらいまでかな。お姉ちゃんに『あんた邪魔!』って言われるけど」 ある意味実に千早らしい答えではある。くつくつと笑いながら、新はさっき放り出したTシャツを千早に手渡した。 |