保湿系トライアルセット

 4.5(2)

新と千早の大学生活:R18ver.



 「……っ、はぁっ……ん、……はぁ……」
 頂点に達した千早は汗を拭う事も意識に上らないのか、床の上でくたりとしたまま、胸を大きく上下させている。一方の新は新で、どこか夢見心地のまま千早の脚の間から身体を退かせた。
(……おれが千早を、いかせたんか……? ……何かまだ、信じられんけど……)
 福井の自宅で初めて千早と結ばれた時は何か考える余裕などまるでなく、気持ちが迸るままに求める事しか出来なかったが、今は少し違う。もちろん千早への気持ちは変わってなどいないが、もっと千早を知りたい、感じたい、そして感じさせたいという新しい欲が自分の中に芽生えている事に気付く。
(……おれ、どんだけ欲張りなんや……自分でも知らなんだなあ……)
「……ん……あらた……」
 少し気怠そうな声に名を呼ばれた新は千早の隣に寝そべると、額にぺったりと貼り付いた髪をそっと掻き分けた。指先が耳元を掠め、千早はくすぐったそうに少し首を竦めた。
「何や? 千早」
 問い返すと突然千早は身体を横に向け、新の首に抱きついてきた。

 「……新ばっかり、ずるい……」
 掠れた声が新の耳をくすぐる。何がずるいのかと尋ねた途端、首を抱く腕にぎゅっと力がこもった。
「だって、さ……私ばっかり、その、されてるじゃん……」
 言いながら千早は抱いていた首から腕を放し、新の胸を手のひらでドンと押す。意表を突かれた新が仰向けに転がると、千早の腕が身体を起こそうとした新の肩をぐっと押さえ込んだ。
「わ、ちょ……千早? どしたんやし急に」
「……わた、私もね? 知りたいよ……新の、こと。もっと……」
 そこまで言ってから、慌てて「知りたいのはこういう事だけじゃない」と付け足すが、千早の視線は新の顔から外れる事はなかった。
(何でほんな真顔で言うてくるんや……? 今までかって別に、何も隠したりとか、してえんのに……)
「何だかね、どんどん不安になるの。……私より新の事知ってる人が居たらどうしよう、って。……新の事好きになればなるほど、今まで知らなかった新を知ると嬉しい。……でもまだ知らない事一杯で。……それが怖いの」
 だから知りたい、と千早は震える唇で告げてきた。

 (……知らん面、か……それは、おれも同じなんかも知れん。今までは離れてたで分からんくても仕方ないって思ってたけど……知りたいって思う気持ちに男も女もないんやし……)
 不安を吐露したタイミングがこんな時だったせいで驚かされはしたが、千早の不安は新にも理解できる。むしろ昔の方が、自分は一人遠くに居て、千早の側にはずっと太一が居た分、新が不安に思う瞬間は多かったかも知れない。そう考えたら、答えは自然に新の口を吐いて出た。
「……分かった。ほんでも、おれかってこんなん初めてやし、お手柔らかにの」
「え、あ……うん。気をつける」
 何に、と問う代わりに新は身体の力を抜く。千早の長い髪が新の額をさらりと撫でるように落ちてきた。毛先が目に飛び込まないよう新が目を閉じると、千早の唇が新のそれを覆うように寄せられた。
「……っ……」
 さっき自分がしたのと同じように、千早の舌が新の口の中に入り込み、新の舌を探し求めて蠢く。新が応じると千早の濡れた舌が絡み付き、思わず新の手にぐっと力が入る。それを感じ取ったのか千早の手が伸びて新の手に指を絡ませてきた。
(……うわ……なんか、凄い……)
 受け身でいると、気を逸らす事が思っていたより難しいと初めて知った。あっと言う間に腰の一点に血液が集まり、履いたままのジーンズに押されて痛みさえ覚える程張り詰めてくる。

 千早のキスが唇から頬へ、耳元へと移動していく。啄まれるたびにゾクリとしたものが電流のように新の背筋を走る。新にとっても初めての感覚で、快感と困惑がない交ぜになって息が乱れてしまう。
「……うわっ、千早……何か、凄いんやけど……」
 繋いでいる手の指先が、勝手に千早の手の甲を探るように動く。が、千早は手をきつく繋ぎ直してそれを許さなかった。
「新は、じっとしてて……」
「……っ!」
 千早に耳打ちされるのは初めてではない。それなのに状況が違うだけで新の頭の中に光が閃き、思わず息を詰めてしまう。
「新……気持ち、いい……?」
 鼓膜から直接千早が自分の身体の中に入り込んでくるようで、新はぞくりと身を震わせる。
「……うん……自分でも驚きなんやけど、……何かすごく、気持ちいい……」
 千早が知りたがっているから、隠す気はなかった。恥ずかしいとは思うけれど、なるべく率直に言葉を返すように努めた。新の言葉を聞いた千早は良かった、と呟いて胸元へと頭の位置を変えていく。

 胸元へのキスは新鮮で興奮しない訳ではないが、皮膚感覚の差なのか千早より自身の反応は鈍いらしい。それを聞いた千早は顔の位置をさらに下へとずらす。新の引き締まった腹筋が作る窪みに口付け、繋いでいた手を離して脇腹をそっと撫で下ろすと指先がジーンズのウエストボタンに行き当たった。
「……外して、いい?」
「構わんけど……子供みたいやな、なんか」
 人に服を脱がされるなど子供の頃以来ではないだろうか。そんな事を思っているとジーンズのボタンが外され、圧迫感が少し和らぐ。無意識に新の口から溜め息が零れた。
「……何?」
「え、あ……いや、その……ジーンズ履いたままやったやろ。ちょっと窮屈やったでさ」
 千早がジーンズを脱がそうとするのを、新は腰を浮かせて手助けする。まだボクサーを履いたままだが、多分千早にもそこを押し上げている形は見えてしまっているだろう。
(さすがにちょっと……恥ずかしい状況やな……)
 前の時も、そこだけは千早の視線から隠していただけに、見られる事に抵抗は感じる。だが、と新は一度だけ大きく深呼吸をして気持ちを定めた。

 「……千早」
 新の爪先からジーンズを抜き取っている千早に、思い切って呼びかけた。
「なに……?」
 見ても楽しくはないと思う、と前置きして、新は言葉を紡ぐ。自分の心音がひどく大きく響いて仕方がなかった。
「普通に着替えてる時人に見られるのもあんま好きではないけどの、……おれを知りたいって千早、言(ゆ)ってくれたやろ。いや千早が言うたのは、こんな事に限ってえんのは分かってるんやけど、これもおれやから、言う。……おれの、が、こんなんなってまうのは、千早にだけやし。千早にやったら……見られても構わんって思えるんや。……何か自分でも不思議やけど、ほんとの事や」
「新……」
 ジーンズを床に置き、千早が新の胸にしがみついて顔を見上げてきた。それに一つ頷くと、新は自分の手でボクサーショーツを引き下ろし、両足を投げ出した格好で床に両手を付いて座る。

 「新、あの……ちょっと真面目に聞いていい?」
 千早の声には戸惑いが混じっている。
「ん……? 何や?」
「こ、これって……痛く、ないの? ……その、さ、触っても」
 これ、と赤面しながら告げる千早の目線は、新の下腹部にくっつきそうな勢いで天を向いているそこを指している。
「まあ急所って言うぐらいやし……ほやけど……ほんとに痛かったらそう言うで。……ち、千早の好きなように、……して、構わんざ」
(……おれ、一体何言ってるんやし……。顔、熱い……)
「じ、じゃあ……あの……しっ、失礼しますっ!」
 勢いごんだ千早の言葉に思わず吹き出しそうになった。

 笑いの発作が治まりかけた時、千早の指がそこにそっと触れてきた。
「……う、わっ……」
 思わず息を詰める。新が思っていた以上に、千早の指が触れただけでも強烈な刺激が腰を走る。
「……熱い、んだね……」
 自分の体内にこれが全部収まったのかと千早は驚きに目を丸くし、その時を再現するように片手で新のものをそっと握るとゆっくり上下に手を動かし出す。
「───!」
(やば……っ! さっきから何やかんや我慢してたで……ギリギリや……! って言うか……千早の手って何でこんな気持ちいいんやし……? ……保つ訳ないが、ほんなもん……!)
 自分で処理する時だって手を使う。だからある程度堪えられると思っていたが、新は自分の目算がとんでもなく甘かったと思い知った。あっという間に息が荒くなり、新は奥歯を音がするほど噛みしめる。それでも千早の手が動くリズムに合わせて腰を突き上げたくなる衝動は簡単には去ってくれない。どうにか気を逸らしたくて片手を伸ばし、千早の髪をくしゃりと掴む。
「……え?!」

 天井を仰いでいたら突然先の方に熱く濡れた感触が走り、新は慌てて視線を戻す。一瞬自分の目を疑いそうになったが、千早の形のいい唇が確かに新自身の張り出した傘を捉えている。
「ちょ……っ、千早、それはアカンって! ……ほんなしたら、で、出てまうで……か、顔離し……っく、っ……」
 狼狽えてしまい、最後まで言い切れない。頭の中が真っ白になって沸騰している気がする。吐き出す息も熱でも出たかのようにひどく熱かった。手を伸ばして千早の顔を引き離そうと試みたが、濡れた唇が与えてくる快感で目が眩み、抗う事が出来なくなる。
「……っ、ち、はや……っ、お願い、や……、顔、……っ……汚して、まう……!」
 溢水点はもうすぐそこまで来ている。切羽詰まって千早に顔を離すよう切れ切れの言葉が口を吐くが、伝わったかどうか全く自信がない。
「……んんっ……」
 新を口に含んだまま、千早が何事か言ったらしいが、今の新にそれを言葉として理解するだけの余裕はなかった。
(もう、もうあかん……っ!)
 千早が喋った振動さえ呼び水になってしまう。きつく瞑った目蓋の裏にちかちかと閃光が走り、腰から抗い切れない大きな波がせり上がって、ついに新を飲み込んだ。
「千早っ、ちはや……っ! ……っく、……う」
 引き締まった腰が大きく震え、目が眩むような感覚の中で堪えていたものが一気に解放される。新の腰が断続的に震えるたびに熱が脈打つそこから迸った。






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written by Hiiro Makishima