Something Four 5
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浴室の方からピー、という音が響いた。 「あ、洗濯終わった」 新は床から起き上がり、押し入れの衣装ケースから適当に出した服を身に着けてそちらに向かう。 「……何で新だけ服着てんの……なんかズルい」 自分が着ていた物は全て洗濯機の中だ、と布団から身体を起こした千早が少し恨めしそうな口調で訊いてきた。 「何で、って。洗濯物干すのに窓開けるでや。……千早、布団ん中入ってねの。裸やし」 「新が脱がせたくせに」 「脱がさなあかんぐらい、濡れたのどこの誰やっけ?」 ああ言えばこう言う、なやり取りが続くまま、新は窓を開けて洗濯物を干していく。さすがに外に見えてしまうかも、と千早は布団の中に首まで潜り込んだ。 手早く二人の服を干し終えた新が布団の側に腰を下ろす。 「もうちょっとしたら、取り込んでドライヤーで乾かすでさ。……ほんな膨れんといて」 乾燥機でも持っていれば話は早いが、実家にさえ置いていない。 「……使わないの?」 「あれば使うやろけど。おれんちの基本って『明るい貧乏』っての。母ちゃんそういうユニークな事、時々言うんや」 全く構えた風もなく、新は答える。母親のそうした朗らかさで、かつての自分は幾度も気持ちを救われた、と言葉を継いだ。 「千早も何べんもおれを楽にしてくれたし、けっこう話合うんかも知れんの」 「そんな風に思ってした事じゃないよ? 何度も言ってるけどさ。でも新がそう言うんならそれでいいし、話合いそうって言われると嬉しいかな」 布団の中から千早が見上げてくる。その顔に笑いかけ、母がずっと女の子が欲しいと言い続けていた事を話す。 「……女の子欲しかった、はいいんやけど、おれの持ち物まで赤とかピンク選ぶのだけは勘弁して欲しかったわ。携帯ぐらいは気にせんけどさ、服とか眼鏡とかはちょっとの。特に眼鏡ん時はめっちゃ反対したわ、おれ」 「あ、それでピンクの携帯だったんだ?」 大学に入って以来、目にする機会が増えた新の携帯電話がどうしてその色だったのか、千早も少し不思議には思っていた。 「うん。本屋のバイトと練習で時間ないで、契約してきてって頼んだら、久々にやられてもた」 言葉とは裏腹に新は朗らかに笑っている。 「狙ったチャンスは逃さない、って感じ? かるたしてたら強い気がするなあ」 そう言われて新は少し考える。母が目聡くチャンスを見つけるのは「赤やピンクに出来るもの」だ。 「……『ごっついピンク色』のかるた札って何か変すぎん? おれ取れる気せんわ」 「ピンクの畳とか」 勘弁してや、と新は吹き出した。そこに千早が抱きついてきてクスクス笑う。 一糸纏わない姿の千早が腰に抱きついている姿は、新に再び火を点けてしまう。 「……なんか、随分やらしい格好なんやけど、それ」 「新が自分だけ服着たからじゃん。……全部脱げば同じって言ったの、誰ー?」 千早の服を脱がせた時の台詞をそっくり返されてしまい、諦めたように新は笑いながら溜め息を吐いた。 「ほやったら、いっぺん手、放してや。この格好で服脱ぐって難しすぎ……って、うわ」 言い切るより先に千早に押し倒されて唇を奪われた。全身で柔らかみを感じ取った新の頭は一気に沸騰してしまう。 「……千早、入れ替わろ」 唇が離れた瞬間、そう告げて逆に千早の身体を倒す。大きな瞳が瞬いて応じてくれた途端、千早に奪われたより深く、一気に口付けた。 「……ん、……っ……」 熱を帯びた吐息がキスの合間に紡がれて新を煽る。 「今のうちに、近くに置いとくわ。……テンション下がると嫌やし、おれも」 一旦キスを解き、本棚の救急箱から薄い包みを取り出して、新は着ていた物を脱ぎ捨てた。 「……さっきのと、普段通りと、どっちがいい? 千早」 覆い被さりながら問うと、千早の両腕が背中にきつく回される。 「新の……好きに、して……」 耳を打つ小さな声に、どちらがいいかと訊いた事さえ忘れて千早の耳にキスを落としていった。 「……っ! あ、……んっ! やぁ……、新……」 普段通りに紡がれる吐息混じりの声が心地よい。 「いつもの声も、おれ、好きやわ」 耳元で告げると腕の中で細い身体が跳ね、背中に回された指が新の背中を引っ掻くように動いた。 「新……私、なんか変……」 不意に千早が呟く。訝しんで顔を上げると、首筋まで赤くした顔と視線が合う。 「変、って?」 「なんか、我慢……できそうに、ない……。もう、欲しい……」 いつもなら、散々焦らした後でなければ出てこない言葉が千早の唇からこぼれ落ちた。 「……んー……」 自分の勢いは今すぐにでも一つになれるが、もう少し千早を楽しみたい。 「もうちょっと、待って?」 新はそう告げて千早の首筋に舌を這わせ、柔らかな胸を手で包んだ。 「あ、あ、んっ、新、いじわる……、やぁ……んっ!」 新が指先で胸の先端を軽く摘むと、可愛らしい抗議は引っ掛かったように止まり、艶めいた声が代わりに飛び出す。 「意地悪とか。……好きにしろ、ってさっき千早が言うたんやろ? ほやから、好きにする」 その言葉にさえ、千早の背中が撓って切なそうな声が上がる。さっきお互いに一度達してしまったからか、千早は普段より早く燃え上がり、逆に自分は余裕が持てている、と新は意識の隅でそんな事を考えた。 指で触れていた胸元に今度は唇を這わせ、滑らかな腿を撫で上げた手が千早に辿り着く。途端に背中に回された指先に力が入り、新に縋り付いてきた。 「あぁっ、やっ、新……っ! 一度に、しちゃ、ダメ……っ! いっちゃう、から……!」 それを聞き入れる男がいるだろうか、と妙な事を新は考えてしまう。とは言え、千早を他の男に味わわせる気など毛頭無い。 「いって、いいざ?」 そっとそこを開き、探り当てた粒はすでに芯を持っている。胸元を吸い上げながら指先でそっと撫でてみた。 「新、あらた……! もう、わたし……、もう……っ!」 撫でる指先に少しだけ力を加える。 「あ、あぁ、ダメ、もう、ダメ……! いやぁっ、ダメっ! い……くっ!」 ついに堪えきれなくなった千早は白い喉をさらけ出して仰け反り、頂点に駆け上った。余韻がやってくると千早は身を震わせ、また新の胸に顔を埋めて吐息を漏らしていた。 「……ん……」 ようやく千早が薄目を開ける。 「まだ、我慢できん感じ?」 その問いに千早が頷くのを見て、新はさっき近くに置いておいた薄いパッケージの封を切る。一旦千早の上から退き手早くゴムを被せると、すらりとした両脚の間に身体を置いた。 「なら……あげるざ? 今度は、ちゃんと、の」 昂ぶった自身を千早のそこにあてがって告げる。ほっそりした腕が背中に抱きつく力に逆らわず、新は身体を沈め千早を割り進む。 「……あ、らた……、どう、しよう……凄く、いい……っ、また、すぐ、いっちゃうよ……っ!」 入り込んできただけで千早の息は乱れ、紡がれていく言葉通り、内側がひくついて新にまとわりついてきた。 「何べんでも、いいざ? 千早が感じてくれると、おれも嬉しいし」 「やぁ、んっ! 耳、弱……いから、言わない、で……!」 そんな声を聞かされて、自分が燃えない訳がない。さっき一気に達した時のように、千早の耳に舌を差し込んで吸い上げた。 「……あぁっ! それ、ダメぇ!」 抱き締めた細い身体がまた震える。 |