Something Four 3
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レースのカーテンで「代用」したウエディングベールの縁を新はそっと指先で後ろに滑らせて、誓いのキスのようにそっと唇を合わせる。顔を離すと千早の大きな瞳が照れたように笑った。 「新。いつか……被らせてね? ほんとのベール」 さっき自分が言った事をソフトな声が告げてくれる。 「うん。……きっと、似合うんやろうなあ」 大学のかるた部に入って早々、二人で呉服屋のカタログモデルになった時に、髪を結い上げていた千早がとても綺麗だった事を思い出した新はそんな風に千早へ言葉を返した。 「新もタキシードとか似合いそうだけど。……ほら、前にスーツ着てたしさ」 「男は添えもん。結婚式は千早が主役やろ。おれは引き立て役や」 結婚式の話に自分達の名をちゃんと含ませた言葉が嬉しくて、千早は両腕で首を優しく抱き、新の唇を小さく啄む。それに応じて新が細い腰に腕を回すと、千早が深く唇を重ねてきた。 「新……」 キスの合間に名を呼ばれて顔を見ようとすると、首に抱きついていた腕に力を入れ、爪先立ちで伸び上がった千早が頬を合わせてくる。 「新……しよ?」 意外な一言が耳に飛び込んできた。 「……千早の方から言われんの、初めてやな。……どうかした?」 そのままの格好でしばらく千早は口を噤んでいたが、思い切ったように再び言葉を紡ぎ出す。 「さっきの話、とか……。なんか、ほんとの結婚式の後、みたいだなあって……」 「後って……ああ、なるほどの」 首を抱かれて少し窮屈な体勢だったが、どうにか千早の耳元に唇を寄せ、低い声で返した。 「……初夜、やろ?」 呟くと千早の身体がぴくん、と跳ねる。腰を抱いている腕に力を入れて千早の背中を少し反らせ、新は唇を奪った。 立ったまま抱き合って長いキスを交わす。千早の唇から時折漏れる吐息に熱が混じりだし、それが嬉しくて新のキスは更に深くなっていった。 「ん……っ、……ぁ……」 首に巻き付いていた千早の手がするりと解け、新の肩をそっと掴んでくる。 「……ちょっとだけ、待っての」 一旦唇を離して告げると、腕の中で千早が小さく頷いてきた。 「こっち、来ね?」 千早の背中が畳で擦れるのを防ぐのと、こういう時の声を周囲の部屋に響かせないため、普段使っている布団を引っ張り出した新が差し伸べた手にそっと自分の手を重ねて、千早は新の側に膝をつく。 「……優しくする?」 千早の方から求めてきた事には驚いたが、連想していたのは「新婚初夜」だったからと新が問うと、千早はかぶりを振った。 「いつもの新が、いい」 無理に優しくしなくていいと千早に言われ、新は腕を引いて細い身体を組み敷く。 「……ほんな可愛い事、言うたらあかんって。……煽ってるんか?」 もっとも何をどう言われても、新にとっては同じだが。 「煽られて、くれるの?」 新の顔を見上げて、千早は少し悪戯っぽく言葉を返す。 「聞かんでも分かるやろ」 短く答えてまた唇を奪った。 「……あ……、んっ……」 くぐもった声が鼓膜を打つ。それだけで新の身体には容易く火が点き、深く口付けながら指先で千早の耳を撫でた。 「っふ……っ!」 素直な反応を返され、新は唇を千早の耳元に持っていく。 「千早の、声。……もっと、聞きたい」 「……っ、やぁ、新……、手、繋いで……。そしたら、いいから……。聞いても、いいから」 そう言われて却下する筈もない。新は左手でしっかり千早の右手に指を絡め、千早の可愛らしい耳にキスを落としていった。 「あ、んっ……! そこ、いい……、新、新……っ」 告げてきた通り、千早が素直に感じたままを口にしてくれる。 少し悪戯心を起こした新は、唇へのキスのように舌先を送り込んでから軽く吸い上げてみた。 「っ、ああっ!」 繋いだ手にぐっと力をこめ、上に乗っている新を押し返す勢いで千早の背が反り返る。 「今、の……、何?! すごく、感……じて……頭、真っ白に、なる……」 「もっと、しよっか?」 さっきと同じように耳を愛撫すると、細い腰が新のそこを擦りつけるように揺れ出した。 「……っ?! 嘘……っ?! やっ、ダメぇっ、い、きそう……っ! う、そっ……、いっちゃう!」 まさか耳への愛撫だけで達しそうになるとは千早自身思っていなかったのか、しきりに「嘘」と口にしていた。けれど言葉とは裏腹に千早の腰はさらに強く新に密着してくる。 「我慢せんで、いいんやざ?」 そう告げて、また吸い上げた。その途端しなやかな身体が一際大きく反る。 「あ、あっ! ダメ、もうダメっ! っ、わた……し、新、私もう……っ! いくっ、い……くっ!」 感極まった声を上げて身体を震わせ、着衣のまま千早は頂点を迎えた。布団の上に腰が落ち、半開きになった唇から小さな声が漏れる。 「あ、……んっ、……ぁ、……はぁっ、はぁ……」 余韻の中を漂う千早をそっと抱く。新にしても、いくら感じやすい千早とは言え、あれだけで昇りつめてしまうとまでは考えなかったせいで、少し驚きを覚えていた。 (……ほやけど、聞いていい、って言って……全部、聞かせてくれた。普段あんな恥ずかしがってんのに……) 嬉しい気持ちがそのまま言葉に乗った。 「好きや、千早」 どうにもならない程、千早が愛おしい。まだ時々震えているからと、強く抱き締めたい気持ちを新は抑え込む。 「……大好きや。……千早」 心が震え、新の視野を滲ませた。 「あ……」 ようやく息が整った千早が小さな声を上げる。 「どうして、泣いてるの……?」 掠れた声に問われ、新はその身体を今度こそきつく抱いた。 「……うん。なんか、すごく千早が好きや……って。大好きやって。……気持ち、止まらんくなった」 「止まんなくて、いいよ。……私も、同じだから」 千早の腕が背中に回される。しばらくの間、柔らかい手の感触を楽しんだ後、新は一度腕を緩めて千早を見る。 「ずっと、付いて来てな? ……おれ、手放す気全然ないけど、付いてきて」 「うん」 手放さないでね、と告げてくる愛おしい顔に目を合わせ、はっきりと新は頷き返した。 |