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Sober Up 5



 「……千早は遠慮とか手加減すんなって言うたけどさ」
 細い身体を抱き締めたまま、新は話を続ける。
「おれの性分もあるけど、千早、感じてくると目が潤むんや。……それ見てると、やっぱ優しくしたげたい、って思ってまうな。……もちろん、好きにできるって凄い魅力的な事やけど、優しくしたいっていうのも一つの欲やし」
「……うん」
 手加減とは分けて考えて欲しいという新の言葉を千早は受け入れた。
「ありがとの」
 背中に回していた片手を外して千早の頬をそっと包む。大きな瞳に見つめられて新の水位が再び上昇の気配を見せた。
「……ねえ、新……。今度は、一緒に……」
「うん、分かった」
 迷わず答えると新は千早の身体を仰向けに戻して唇を重ねた。

 「……ん、あ……んっ……、う……そっ? ……あ、ンっ!」
 キスの合間に漏れ出した千早の声が急に裏返る。
「……どしたんや?」
「そ、れが……あの、何か私、まだ……ヘンみたい……。キスだけで、今ちょっと……」
 新は先を急かさず、じっと待った。
「……か、軽くだけど……い、っちゃった……みたい、で……」
「ほうなんや?」
 返ってくる新の声には驚きの色はない。逆に千早の方が不思議に思ってそれを問う。
「ほやかって千早、敏感やし……さっきの事考えたら、そういう事もあるんかなって思うしの。……続けると、辛いやろか?」
「辛くはないと思うけど……あの、もう……ダメ? その、新……ので、って……」
 千早は上目遣いで言葉を継いできた。潤んだ目は何度見ても新をドキリとさせる。

 「や、おれはいいけど……千早、大丈夫なんか? ……ちょっとだけ、確かめさせてもろて、いい?」
 新はそっと片手を千早の両脚の間に滑り込ませる。
「……ん、……んっ、……っふっ!」
 指先が千早をそっと開くだけで、くっと息を詰めた千早がしがみついてきた。告げられた言葉の通り、新の指先に十分すぎる程溢れた蜜が伝ってくる。
「っあ、あ……、やぁ……」
「……大丈夫、みたいやの……」
 新は一度手を離し、自分のジーンズを下着ごと脱ぎ捨てる。散々辛抱を強いた分身が反動で新の下腹部を叩き返してきた。
(……一番の『わけなし』は、おれのやな……)
 千早の脚を開かせて、そこに自分の身体を割り込ませた新は、自分の先端を千早の入口に宛がい、そのままゆっくり身体を沈めていった。

 「あ、新っ、あらた……ッ!」
 新が徐々に深く入り込んできて、あっと言う間に息を乱した千早が縋るように手を伸ばしてきた。
「……っ、千早……っ、」
 既に何度も達した千早の中は熱く熔け、繋がったそこから新も溶かしにかかってくるようで、新は差し伸べられた手をきつく掴む。
(手加減とか、ほんな悠長な事……絶対無理や……!)
「動く、ざ……?」
 ぐっと息を詰めて告げると、千早は手を握り返してくれる。抜けてしまうギリギリまで大きく腰を引いた新は、叩き付けるように一気に一番深くへ突き入れた。
「っあん、っ! あァ……っ、ンっ!」
 半開きになった唇からたちまち甘い悲鳴が紡がれ、新の腰に痺れるような快感が走る。さっき指で知った、千早の中の、一番弱い箇所を今度は自分自身で知りたいと、新は千早の腰を持ち上げ、そこに素早く枕を突っ込んでそれ以上腰が落ちないようにすると、両肘を付いて体重を支え、勢いよく腰を送り出した。

 「あ、や、やぁ……っ、そこ、ダメぇ! ……また、……ちゃう、んぅッ!」
「……ダメ、でない……っ、おれかって、一緒が、いい」
 艶めかしい抗議を却下した新は千早の中全てを確かめるかのように、送り込む腰の角度を時折変えていく。
「ひ……っ?! ダ、ダメっ、止まんない……っ!」
 新が行き来するたびに千早の中がひくつき、ぎちぎちと新を締め付けて離さない。その貪欲さと同じだけ、新もまた、そこに全部を注ぎ込みたいという欲望を強くさせていく。
「……千早、おれも……、もう……限界や……っ、出すざ? 千早ん中……っ」
「新、新っ……、お願い、お願いっ! ……来てぇッ! ……っん、ふ、あぁぁっ!」
「……っ、……っく、ち……は、や……っ!」
 目の前が真っ白に弾け、新は身体を大きく震わせながらありったけを千早目がけて解き放った。

 「……ねえ、新」
 汗ばんだ身体が少し冷えてきた頃、ようやく千早が掠れた声で名を呼んできた。
「ん? 何や」
「一つだけ、引っ掛かってるんだけど。……さっき私に、おれじゃ物足りないかって……聞いたのは、どうして?」
 千早の目はまっすぐ新に向いている。自分の目が札を見る時のようだと千早は言っていたが、今の彼女の目もそれに似ていると新は思う。
「ああ……。おれ、付き合うとかも千早が初めてやろ……何するんでも手探りになってまうが? ほやで、もしかしたら千早がそう感じてるかも知れんなって……『思ってた』んや」
 新は敢えて過去形を強調した。
「……思って、た?」
 案の定千早は大きな目をさらに大きく見開いて鸚鵡返しに問う。新は小さく笑い、先を続けた。

 「手探りなのは多分ずっと変わらんけど、仮にほうでなくても、千早の受け取り方まで変えられる訳でない。……千早がそう感じんように、おれが努力すればいいだけや、って……さっきので、少し分かった気する」
「……そうなんだ。……けど別に、物足りないって思った事、ないけど」
 千早が言い返してきて、新は飲み会から彼女を負ぶっていた時の事をふと思い出して笑う。
「酔っ払っとった時に、甘えたいって言うてたのにか? ……酒入ると言えるのって、逆に言うたら普段思ってても口にしにくい事やと思うけど?」
「あ、あれはその……!」
「その、何やし?」
「……意地悪」
 拗ねたような千早の顔に、新はまた笑みを返す。

 「言えばいいんやよ? 素面やっても。……ただし、おれにだけや」
 飲み会での出来事を考えれば、そこだけはちゃんと言いたかった。
「……うん。あ、そうだった、負ぶってくれて、ありがとう。……言うの、忘れてた」
 結構酔っていたように思ったが、それを覚えているのならそこまで悪酔いしていた訳でもないらしい。
「どういたしまして。……しばらく部の先輩とか、からかってくるかも知れんけど、千早は覚えてないって言うとけばいいざ。酔っ払いの『わけなし』やって、先輩らも分かってる事やし」
「……わけなし?」
 千早がきょとんとしている事で、新はようやくそれが地元でしか通じない言い回しだと気付く。
「あ、あー……福井弁やったんか、これ。当たり前ーに使こてる分、方言やって分かってえんの結構あるなぁ……はは」
 先輩がビールを注いでくれた時もうっかり、容器から零れる寸前まで注がれた事を示す「つるつるいっぱい」という福井弁を使いそうになった、と新は苦笑を浮かべた。

 「……千早って、昔からおれの福井弁聞いても、どんな意味、って言うてくるの少ない気する。……何でやろ」
 改めて考えてみると、メモなど取らないからと言ってくれた小学生の時からそうだった気がする。もちろん当時も今も、千早のそういう面は新にはとても嬉しい事なのは変わらないが、全く通じていない言葉もあったのではないかとふと気になって聞いてみた。
「さあ……私にも良く分かんないけど」
 基本的に新と自分の話し言葉では、抑揚と語尾が違うだけだと思っている千早は、話していればその語調で大まかな意味は掴める、とあっさり言葉を返してきた。
「まあ、今のみたいに全然違う言い回しだと、やっぱり新に聞かなきゃ分かんないけど」
「……なるほどの」
 子供の頃のメモと違い、千早は意思疎通を図りたいというはっきりした理由で意味を問うてきているから、抵抗なく答える事が出来るのだと新も納得できた。
「ほやけど千早にばっかり頭使わせるの悪いし、おれも東京の言葉なるべく使うか?」
「ううん、いいよ。……言いそびれてたんだけど、私さ、教員採用試験ね、福井で受けるつもりだし」
「……え?」
 驚いて新は身体を起こした。






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written by Hiiro Makishima