POSSLQ
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ゆっくり腰を送りながら千早の背中にキスを落とす。 「あぁ……あんっ、背中も……感じちゃう……」 そうなのかと尋ねる必要などない。唇が触れただけで千早がきゅうっと新を締め付けてきたからだ。 「……千早が感じん場所って、脇腹以外にあるんか?」 とは言え千早の身体なら、ほとんど全部触れている筈だ。愛撫した事がないのは多分、千早の「後ろ」だけだろう。片腕だけそっと外して試しにそこへ指を伸ばしてみる。 「っ、そこは嫌っ」 普段抱いている時に恥ずかしがって言うのと違い、はっきり拒絶だと分かる声を千早が上げた。 「うん。ごめんな」 新にしても、そこへはどう愛撫していいのか分からない。あっさり手を離し、続きに戻る。 動かしていくと千早の手は掴んでいるシャワーノズルを握り込むように持ち直していて、それがどこか、新のものをそうしているように見える。 「……何か、随分ヤラしい持ち方してるな」 「んっ……新、が……あん、二人、いたらいいのに……」 不思議な事を言ってくる。 「だっ、て……っあん! 新に、されながら、わ、私も、して……あ、あげられる、から……っ」 千早のその言葉に誘われ、新は自分の右手を口元へ持っていき、唇に触れさせる。千早が口を開けて含んだ新の指を、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め、流し目を新の顔に送ってきて新をぞくりとさせた。 「……色っぽいけど、おれが二人居たら……絶対もう片方に、妬いてまう。……中で、動かして、いけるの……一人だけやろ」 こんな風に、と一転して大きく千早の中を行き来させてみる。 「やぁんっ! それ、すぐ……、あんっ、いっちゃう……ってばあ! んっ、そこ……っ、いっちゃう……!」 耳慣れた喘ぎ声を上げて千早は仰け反る。新自身ゆっくり挿入した時の快感が凄く、今普段通りに動かしてみただけで放出の欲求がぐんと高まった。 「今、おれ……そこまで、保たん。……一緒に、いきたいんや……」 千早が頷き、きつく締め付ける中を新は大きく速く動かした。二人の身体がぶつかり合う音が狭い浴室に響く。 「あっ……ん! あっ、あぁっ! もう、もうダメ……っ! っあ、新、あらた……! っ、ダメっ、いく……!!」 「……! おれも、もう……っ!」 細い腰を掴んでスパートをかけ水位が限界まで押し上がると、千早の中も頂点に向かおうと、締め付けながら奥の奥まで新を引き込む。 「あ、あ、あぁぁ……っ! 新、わたし……っ、ん、んっ! ───っ!!」 「っ……! ちはや……っ……、い……くっ!」 感極まった声を上げ、背中を反らして達した千早の中に、新も大きく腰を震わせ、熱の全てを放った。 ◇ ◇ ◇ 部屋に戻り、それぞれの荷物を枕元に並べる。何故か千早は鞄を開けて小さなポーチをすぐ側に置いていた。 「なんか大事なもん入ってる?」 尋ねる新の前に、ポーチの中身が差し出された。小さな錠剤が等間隔に並んだシートを見て、どこか具合でも悪いのかと心配になって問う。 「そうじゃないんだ。恥ずかしかったから言えなかったんだけど……これ、……ピルなんだ」 新も経口避妊薬だと聞いた事ぐらいはあった。 「……だけど、使ってる一番の理由は、かるたなの」 「えっとごめん、差し支えなかったら、教えて」 かるたとピルがどう繋がるのか分からず、新は申し訳なさそうに口を開く。 もう隠し事はなしだから見せた、と千早は少し俯いて答える。 「大会は、ほとんど日曜にあるよね。私は万全で集中して取りたい。特にクイーン戦はそう。だから試合と……その、アレが重ならないようにって。……二年くらい、前からかな。言えなくて、ごめん」 服用目的が月経周期を調整するためと聞いて、新はそんなデリケートな話題を問うてしまったと頭を下げて詫びた。 「大変なんやな、女って……。えっと、二つだけ真面目に質問していいやろか……?」 探るように告げると千早は構わないと頷く。 「服み始めたのは、実際に試合と……んと、かち合った事あったから?」 「そう。決勝まで取れるけど、普段と比べるとやっぱり調子は落ちる感じ」 質問のもう一つは、と千早が話を促してくれた。 どう言葉にしても千早を咎めているか、落胆しているようにしか聞こえない気がして新は少し言葉に詰まる。 「あ、の。千早は……この先、妊娠って……可能なんか、って。……こんな聞き方して、ごめん」 「うん。服むの止めたら普通に大丈夫」 千早自身その不安があったため医師に尋ねたそうだった。 「こんな変な言い方しか出来んかったの、ほんとにごめん。言いづらい事やのに、答えてくれて、ありがとう」 「ううん。……あ。えっと新、一つだけ釘差していい?」 「いくらでも」 質問をしたのは自分の方だ。新は真顔のまま短く返す。 「服んでるから今は絶対妊娠しないって訳じゃないから。そこは知ってて欲しいの」 「その事は絶対に履き違えんって今、約束する」 男の自分には分からない、で思考を止めていい話ではない。籍を入れるのもまだ何年か先の事だ。正しい知識を得ておこうと決めた。 「うん。……そろそろ、寝よ? 体調、万全にしたいもん」 「そうやな。……お休み、千早」 明かりを落として眼鏡を外す。千早の心地好い温もりが新を深く眠らせる。 ◇ ◇ ◇ 翌日、新の携帯が着信を報せた。出てみると物件を問い合わせた不動産屋からの連絡で、新は一度電話を手で塞ぎ千早を呼ぶ。 「すみません、お待たせしました」 話を再開させ、下見の予定を立てていく。自分達二人は高松宮賜杯が終わるまで近江神宮に居るので翌日はどうかと不動産会社の都合を尋ねた。 「……大丈夫ですか。ならその日に行かせてもらいます。会社の方で合流ですか? はい、場所は知ってるんで。……はい、よろしくお願いします」 多分千早には聞こえていたと思うが、日時と場所を改めて伝え、前夜祭に向かった。そして次の日。朝一番に選手と関係者全員で近江神宮に詣でる。揃って柏手を打ち深く頭を下げると、心の中が澄んで気持ちの良い緊張感で満たされていく。 「さてと。ほんなら」 「楽しもうね」 短く言い合って浦安の間の畳に一歩踏み出した。 |