POSSLQ
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夕食と入浴を済ませ、新は明朝の出発時間に合わせて目覚ましをセットする。 「他の人らも一緒やし、乗り遅れる訳にいかんもんな」 「……新、札の係って誰にお願いしたの?」 白波会で新が誰かに頼んでいた風でもなかった気がして千早は尋ねた。 「ああ、高校のって言うか、かるた部作った時の後輩や。あっち帰ったらまた南雲会に所属戻すしさ」 そう答えて千早は誰に頼んだのか、新も問う。 「色々迷ったんだけどね、かなちゃんにお願いしたんだ」 瑞沢かるた部初代メンバー中、二人きりの女子選手である奏は、千早が頼みに行った時二つ返事で承諾してくれた。 「私も専任読手を目指してますから、得られる物が多いです……って言ってくれて」 それに、と千早は言葉を継いできた。 クイーン戦での大盤係を奏に頼みに行った時、専任読手の事とはまた別に、受けたい理由があったと奏は言っていた。そう千早は話す。 『千早ちゃんは次の春、綿谷さんと一緒に歩き出しますし。……暮らす土地が、という事じゃなくて、一つの節目ですから、ぜひ』 かるた仲間であり友人であるのは何も変わらないが、千早を「新と共に進む千早」として送り出す、これ以上の機会はないからと受けてくれた。 「卒業式みたいなものですね、って」 「……卒業式か。……勝って、堂々と送り出してもらいね? 千早」 瞳に強い光を湛えて千早は頷く。 「勝つために、体調万全にしとかんとの。……寒かったりせんか? 風呂上がりやで暖房の温度、少し下げてあるけど」 「うん、大丈夫。このスウェットあったかいし。あ、お布団暖めておく?」 そうやな、と答えた新を押しのけて、千早は押し入れから新の布団をさっさと出してしまった。 「……どしたんやし」 布団ぐらい自分で出すのに、という新に千早がくすぐったそうな目を向ける。 「予行演習……みたいな、もの?」 「……は?」 「お、奥さんになったら……とか」 一緒に暮らし始めたら自分がすべき事だからと続ける千早の髪を新は撫でた。 「すべき、とか思わんでいいざ? おれは五分五分でいいって思ってる」 そういう役割分担も、これから生きていく中で決めていけばいい。そう言葉を掛けると千早も笑ってくる。 「ほやなあ……予行演習って言うんなら、膝貸して」 「え? あ、うん。……こうでいい?」 千早が横座りになると、新はごろりと横になって頭を乗せる。 「……なんか、亭主関白っぽいって言うか……」 「さすがに緊張して疲れたし。ちょっとぐらい、甘えさせてや」 そう言いながら膝枕のまま俯せて、スウェット越しの腿に顔を擦りつけた。 「ちょ……っ、やぁ……んっ……」 身体を捩って躱そうとする千早の腰に腕を回して逃げられなくさせた。新はそのまま指先を服の裾に滑り込ませ、しっとりした肌の感触を楽しむ。 「……くすぐったいってば……」 だったら、と新は頭を上げて、腰を抱いていた腕を背中へ回して千早の体重を支えられるようにすると、そのまま仰向けにさせた。 「くすぐったいの嫌やったら……気持ちいい事、するか?」 千早の返事を待たず、唇を塞いだ。 「……っ、ん……」 くぐもった声が小さく漏れる。 「する?」 キスを解いてもう一度聞く。大きな瞳がこくり、と応じ、新は再び唇を重ねた。 一時の勢いではなくじっくりとプロポーズについて考えろと告げた日、もしかしたら千早との最後のキスになるかも知れないと、唇の柔らかさや熱を心に焼き付けておきたくて、ひとつひとつ確かめた。 「……は、ぁ……っ……」 あの時のように新は深く唇を合わせ、舌先で触れ、自分に合わせて開く千早の唇へ滑り込ませ、白く粒の揃った歯列や熱く濡れた舌やその付け根、上顎と全てを味わうような口付けを続ける。 (……あん時とは違う。これから始まるんや、って千早に伝えたいからや。……ずっと一緒や、って……) 「んっ、っふ……ぁっ……ぁん……」 千早の甘い吐息が耳を打ち、キスを解かないまま指先で長い髪を梳いて耳をそっと撫でた。 「っ……?! んっ、ぅ……ん!」 顔を振ろうとした千早を、新はその舌を吸いながら絡め取って封じた。自分の下にある身体が時折跳ね、熱くなっている。 ようやく唇を離すと千早の大きな瞳はとろんと潤み、蕩けたような表情のまま新を見上げていた。新は今離した唇で今度は耳元に触れ、小さく音を立ててキスを落とす。 「あ……っ!」 ひくん、と身体が震えて、息を吸いながら出しているような声が漏れた。 「千早……」 「っ、あぁん!」 名を呼びながらキスを首筋にも落としていくと、千早の唇からは可愛らしく新を煽る声が間断なく紡がれる。 「……もっと、感じて……?」 その熱に浮かされるように片手をスウェットの中に滑り込ませた時、予想外の柔らかな感触に新の方が驚いてしまった。 「千早……ノーブラ?」 てっきり着けているものと思って、首筋から顔を離して尋ねる。 「だ……って……。寝る、前……だし……」 「ああ……なるほどの。おれは楽でいいけど。……ほら」 少し手を動かして、千早の乳首に指先でちょん、と触れた。 「んっ、だめぇ……」 「……またそれ言うし」 もう一度首筋に顔を埋めて言葉を返すと、千早の背はしなやかに反る。 「脱がせてまお」 わがままに言い放ちスウェットを裏返す勢いで引っ張り上げて脱がせると、形良く盛り上がった乳房がその勢いでふるりと揺れ、新をさらに煽り立てた。 千早のスウェットパンツもそのまま脱がせて新も上半身裸になる。身体の上に覆い被さると千早の両腕が背中を抱いて受け止めてくれた。 「……あのさ、千早」 呼び掛けに千早の肩がぴくんと動く。 「将来結婚するって、今日認めてもらったやろ? それはつまり、これから先ずっと一緒やって事やが?」 「……うん」 多分まだ意味が掴めないのだろう。千早は少しきょとんとしていた。 「前に言わんかったかな。隠し事とか、変な見栄張るとかなしやって思うって」 「覚えてる。新の、結婚観の話……だよね?」 それに一つ頷いて続きを話す。 「ほやから千早も、正直に言ってくれたら嬉しい。したい事……されたい事」 女の方から求める事を、はしたないと考えなくていい、欲したそのままを聞かせて欲しいと新は穏やかに告げた。 「……うん……」 頬に朱を刷いた千早が、それでも新の目を見て小さく答える。 「まあ……恥じらってる千早も、それはそれでエロいんやけどの」 そうした羞恥心を忘れるほど乱れさせて自分を欲しがらせたくなる、と言葉を継ぐと千早の顔が赤く染まった。 「……試しに、言ってみても、いい?」 窺うように言われたそれを新は笑みながら促した。 「明後日、名人戦クイーン戦あるから……新の腰にも変な負担かからない格好が、いいな」 「おれらどっちの腰にも負担少ないってなると……どっかに掴まらせての立ちバックなってまうざ。千早あれ、そんな好きでないやろ」 向かい合って抱き合えるのを千早は好む。 「……背中から抱き締めてもらうのは好きだよ。ただあの格好って新の目の前で、どうしようもなく自分がどろどろに溶けてくみたいで……それが恥ずかしい、って……いうか……」 少し考えてから、新は口を開いた。 「風呂場、行こ?」 仮に腰が痛くなっても狭いだけに浴槽もすぐそこにあり、しかも明日はまだ前夜祭で体調を整える余裕は十分ある。 「……うん」 おいでと差し伸べられた手にそっと掴まって千早は身体を起こした。 |