No Regret 5-b
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再び新が胸元に顔を埋めると、千早は差し出された手を強く握りしめてきた。 「あ……んっ……!」 つんと尖った先端を濡れた舌が行き来する度に長い髪を振り乱して堪えてはいるが、唇から零れる艶めかしい声を今度は抑えていない。 (……さっき、おれが声聞けて嬉しいって言うたで、恥ずかしいの我慢してくれてるんや……) 新の指や唇が触れる場所を変えるたび、どんどん荒くなる呼吸や赤く染まった頬、恥じらいながらも全身で新の愛撫に応える様は彼の胸を切なく締め付ける。 「……好きや、千早」 顔を上げ、決定戦の時と同じ言葉を千早に投げかけると、千早は掴んでいた新の手を離して両腕でしがみついてきた。 「私も、だよ……っ、新ぁ……」 泣いているようにさえ聞こえる感極まった声音が鼓膜を打ち、焦ってはいけないと辛うじて残っていた新の自制心を吹き飛ばす。 自由になった手を下ろして千早がたった一枚その身に残していたショーツを掴んで引き下ろし、爪先で器用に千早の足首へと小さな布地を押しやった。ちら、と視線を落とすと白く引き締まった腹と、新の視線を控え目に遮る淡い茂みが見える。 (……見たの、初めてやけど……綺麗やし、我慢出来んくなるな……) その眺めだけでも鼓動が早くなり、新は夢中で片手を脚の隙間に差し込んで指先で千早を探りだした。 「……っ、あ……っ、……ん、ぅ……っ」 指先がぬらりとした熱を感じ取ると、千早の背はまたしなやかに反り返る。反動で膝が曲がったせいか、新の指が探っている千早のそこを守るように閉じていた襞が細く口を開き、とろりとした蜜が新の指にまとわりついてきた。 「凄……いな……」 蜜に塗れたまま指先を少し上の方へずらしていくと、他とは違って柔らかく尖った感触がある。新が指の腹でそっとそこを撫で上げてみると、千早の唇から漏れる声がまた変わった。 「……やっ、んんっ……!」 千早の両手の指にぐっと力がこもり、新の背中に爪を立てる。もっとも日頃からかるたの練習のため爪を短くしているから、新はそこまでの痛みは覚えない。 (……今の、って……?) さっきまでと似ているようでどこかが違って感じられる千早のその反応をもう一度確かめてみたくなり、新は壊れ物を扱うように注意深く、同じ箇所をゆっくり指先で確かめる。 「っふ、ぁ、あ……あぁ……っ」 泣いているような甘えているような声が唇から紡がれ、千早のそこからまた熱い蜜が溢れてくる。いくら未経験の新でも、ここまでくればその反応を勘違いする事はない。 (千早が……感じて、くれてるんや……。おれ……嬉して、どうしていいか分からんくなってまいそうや……) 自分の拙い愛撫に千早が全身で応えてくれる。その喜びが新の水位をまた押し上げて、腰のところでわだかまった熱は張り詰めて痛みさえ覚える程だった。 「ご、めん千早……おれ、もう……。我慢、できん……」 掠れる声で告げると、新にしがみついていた細い身体が一瞬びくりと震えた。 新の掠れた声を耳にして、千早はきつく瞑っていた目を薄く開ける。最初に視界に飛び込んできたのは思った以上に近くにあった新の肩口で、そこから辿るように顔を上げると、熱を孕んでこちらを見ている新と視線が交わった。 (……新も、こんな焦ってるみたいな顔するんだ……) そして何故、新がそんな表情を浮かべているかを考えようとして、千早の鼓動はますます早くなってしまう。 (ひとつに、なりたいから……なんだ。……私と……) 答える事もひどく恥ずかしいのは確かだが、新がいい加減な気持ちで言っている訳ではないと分かっている。千早は新の背中にしがみついていた手を片方外して、一度ぎゅっときつく手のひらを握り込んでから、口を開いた。 「……新……。が、我慢とか……しなくて、いい、から……」 千早の言葉を聞いて、さっきから千早の脇腹辺りに押し当てられたままだった新の一部がぴくん、と動いた。新の上半身に遮られて直接は見えないが、肌に触れる感覚でそれがどの位の大きさなのかは何となく見当が付く。 (大丈夫……。きっと、平気。……新と、だから……) 握っていた手を開き、新の頬にそっと添わせながら千早は新に分かるようはっきりと頷き、震える唇をどうにか横に引いて笑みを形作った。 「……わ、かった。……千早、えっと……深呼吸、しての。……どのくらい痛いんかとか、流石におれも分からんけど……出来るだけ痛くないように、するで」 言葉を返してくる新は耳まで赤くなっている。千早は言われた通り、ゆったりと深い呼吸をし始めた。 「……っ」 新の膝が千早の両脚を割って、出来た隙間に引き締まった身体が潜り込んでくると、やはり緊張で一瞬呼吸が詰まってしまい、耳元で鳴っているかのように大きな音を立てる心臓が、深呼吸を妨げてしまう。 (と、とにかく……息全部、吐いちゃえば……) 「……ふぅ……っ」 肺の中の空気を全て吐ききると、千早の胸が自然に持ち上がって新しい空気を取り込む。 初めての事に恐れもあるだろうに、千早は健気に深呼吸を繰り返す。言った通り、なるべく痛みを与えたくない、と新は一つ一つの動作を規則的に上下する千早の胸の動きに合わせていった。 (焦ったらあかん……無茶して痛いの、千早の方なんやで……) 新の指が千早の入口を探り当てたり、そこに自身の塊をあてがった時、やはり千早の呼吸が一瞬乱れる。新は焦るなと頭が痛くなる程自分に言い聞かせ、千早の呼吸の継ぎ目に動きを合わせようと自分も同じリズムで息を吐く。 「……ふぅ……っ」 千早が息を全て吐き切り、身体の力が一番抜けた瞬間を狙って、新は千早の中をゆっくり押し開く。 「……、う……ッ、……あ、らたぁ……っ」 新の熱が潜り込んでいくごとに、千早の唇から堪えきれない細い悲鳴がどうしても上がる。今日まで何者の侵入も許さなかったそこは狭く、送り込む腰にかなり抵抗が伝わったが、やがて新の先端は一際抵抗の大きな箇所に行き当たった。 「千早……っ、息、しててや……?」 眉を寄せて必死にそれだけ告げると、新は千早の内側にあるその最後の抵抗を突き破ろうとぐっと腰を突き入れた。 「うぅ……っく、つ……ぅっ、……ッ!!」 ふっと抵抗が軽くなったと感じた瞬間、千早の目が大きく見開かれ、そこに見る見る涙が溜まってこぼれ落ちた。 「新、新ぁ……っ」 しがみつきながら何度も呼ばれる自分の名に、新の中の感情が一度にいくつも揺さぶられる。こんな健気な相手に自分は酷い事をしているのではという罪悪感と、それでも大好きな千早とようやく一つになったという多幸感。 「千早……、大丈夫、か?」 ごちゃ混ぜになった気持ちのまま尋ねると、千早は新にしがみついたまま何度も首を縦に振ってきた。 「ちょっと、痛いけど……でも……新と、ひとつに、なってるから……いいの」 途切れ途切れに言われるそれが、新の中の感情を一つに戻す。あまりにも幸せすぎて涙が零れそうな程だった。 「おれも……嬉しい。……今、千早と……一緒やから」 普段の新なら、泣き顔など決して人に見られたくないと思うが、今は気にならない。少し落ち着いてきたのか千早が片手を新の肩口から外し、眼鏡の縁を潜るようにして親指でそっと新の目元を拭ってきた。 「……ありがとう」 一言礼を口にして、新は顔に伸ばされた千早の手をそっと取る。 「動いて、いい……か?」 「……うん」 千早が頷くのを待って、新はようやくゆっくりと腰を動かし始めた。 「う……わっ……」 ただでさえきつい千早の中は、新の動きに合わせて絡み付くように蠢いていて、全てを収めるだけでもかなりの我慢が要ったというのに、もう一段階上の我慢が必要だと思わされる。 (柔らかいのに、凄い、締まるし……熱い……。何やし、これ……?!) 少しでも気を抜いたら、繋がっているそこから自分が溶けてなくなりそうな気がする。 「ちは、や……、凄すぎ、や……」 新自身、何を口走っているか、だんだん自覚出来なくなっていった。 「……なに、が……?」 さっき取った手をきつく握り返しながら千早が問うてくるが、それへの答えに言葉を選ぶ余裕は新からとうに失せている。 「千早の、って……すごい、気持ち、いいんやもん……。おれ、もう……そんな保たん……っ」 言った途端、千早は繋いだ手を解いて新の首をきつく抱く。 「わ、分かんないよ、私そんなの……。でも、新が気持ちいい、なら……いい、よ」 新の忍耐もそれが限界だった。 「……っ! っく、あ、あかん……っ、ち、千早っ……!」 一転して大きく腰を送り込むと、千早の唇から言葉にならない声が漏れてくる。 「んっ、あ……ぁっ、新、新ぁっ! ……好き、大好き……っ、新っ……」 ベッドの軋みの間隙を縫うように、感極まった千早の声が新の鼓膜を打ち、新の腰に痺れるような快感が走った。 「……おれ、もや……っ、ち、はや……。千早……っ、どうしていいか、分からんぐらい、好きや」 自分より華奢な身体をきつく抱き締めて、新は限界まで動きを早める。 「っ、もう……出て、まう……っ、千早、おれ……っ、っく、……っ!!」 新の腰が大きく震え、千早にきつく抱き締められたまま新は全てを吐き出した。 「……新……」 千早が目を閉じると、こぼれ落ちた一滴の涙が新の枕にすうっと吸い込まれて消えた。身体の奥深くに少しだけ鈍い痛みが残っているが、心の中はこれまでにない程満ち足りているのが分かる。身体の上の新の重みや、まだ荒い息遣い、汗でしっとりと湿った短い髪。自分だけが知っている、新の別な一面がそこにあると思うと、千早の口元には自然に笑みが浮かんでいた。 |