保湿系トライアルセット

Mine Later On 6

R18版



 キスの合間に零れる千早のくぐもった声が新の鼓膜を揺さぶる。それに突き動かされて新は指先で千早の中を探りだした。
(熱い……。すごい、熱い……)
 前の時はゴムを被せて挿入していたからか千早の内側は滑らかだと思っていたが、指に伝わる感触は新の予想をはるかに超えている。熱さや柔らかさ、きつい締め付けはこの間と同じに思えるのに、細かい襞が指を舐め上げるように時折蠢いて、どう形容していいか分からない。
(……おれ、指一本しか入れてえんのに……。きついのに、優しく……締め付けてきて……)
 自分のものよりは明らかに細い指を奥へ引き込むように締め付けているのに、誰かに掴まれた時の軋むような感覚と違って、弾力に満ちていながら柔らかい。
(千早の胸、揉んだ時も似たような事思ったけど……、違う。……比べもんにならん。ならんけど……どっちも、どうにもならんぐらい、気持ちいい……。頭、飛びそうや……)
 焦げ付きそうな気持ちが新を動かした。

 「千早……」
 唇を離して耳元で名を呼ぶ。
「っ、あぁ……っ!」
 甘い声が上がるのと同時に、新の指を受け入れている千早がひくんと動いて締め付けを増した。
「あっ、や……、んっ、ふ、ぁ……っ!」
 指を送り込みながら耳朶にキスを落とすたび、リズムを合わせるようにまた千早が蠢く。それに押し流されるように新は体重を支えている方の腕を不器用に動かして、千早の胸にどうにか指を辿り着かせた。
「やぁ、ダメ……っ! そん、な……いっぺんに、されたら……っ、あっ、あんっ!」
 新の下にある身体がのたうつ。千早が生まれて初めて自分の指で触ったと言っていた、ぷっくりとした粒も一緒に撫で上げたいと思った時、新は自分の腕が二本しかない事に初めてもどかしさを覚える。
「……え、っ?!」
 合わせていた肌の間に何かが潜り込んだと感じ取ったのを訝しみ、新が下げた視線の先にきらりと光るものがあった。

 「ちはや……、何、で……」
 明かりを反射して光っていたのは千早が嵌めてくれているファッションリングと気付き、新の声が裏返る。自分より細い指先が躊躇いがちに、ついさっき一緒に触れられなくてもどかしいと思っていたそこをゆっくり往復していた。
「っ、……あらた、もどか、しい……って……言った、から」
(おれ、声に出して……言ったんか?)
 もどかしさを感じていたのは事実だが、言葉にした記憶は全くない。けれど千早は何度か自分が心の中で思ったのと同じ事を口にしていた。自分でも意識しない程の小声でさえも優れた耳は聴き取ったのかも知れない。
「指、増やすざ……?」
 望みに応えてくれる、いじらしい千早にもっと感じてもらいたい。だから千早が指を動かすのを止めさせず、新は自分の人差し指も中へ送り込み、内側をさらに探り出した。

 「んっ、あ、あらた……っ! あぁっ……新、新っ!」
 細かい襞の一枚一枚を確かめるように指を動かすと、千早の指先もそれに合わせて早く擦りだし、紡ぐ声から余裕が失せるのに、逆に甘さは増していく。
(……ここだけ、何か感触違う……? 何やろ……)
 柔らかい千早の中にある、少しだけ伝わる感触が違う箇所を指先が見つけた。
「ひぅ……っ?!」
 またトーンを変えた声が唇から飛び出るが、締め付けは一段ときつくなり、両足の爪先だけを床につけるように腰が持ち上がっている。
「っ?! 何、か……来、ちゃうよ……! やっ、新、やぁ……ぁっ! ダメっ、新、もうダメ……っ!!」

 「……う、わ……?!」
 指が動かせなくなるほど引き絞られて、驚きが新の口を吐いて出た。
(こないだも、こんな……締めてきてたんか?!)
 それでも動かしたくて指先を少し曲げた時、千早の喉から悲鳴のような声が絞り出された。
「───っ、あぁぁぁっ!!」
 千早の身体が大きく震え、指を食んでいたそこから熱い飛沫が噴き上がり、爆ぜるように痙攣している。
(……凄、い……。知りたい。千早に、入れたい……。おれので、もっと感じたい……!)
 抗えないほど激しい情欲が新の裡で膨れ上がり、先端から零れる露が滴り落ちた。
「あ、ら……た、指、抜い、て……!」
 ひどく掠れた声で呼び掛けられ、痛かっただろうかと手首まで濡れた指を引き抜いて尋ねたが、千早は大きくかぶりを振っている。

 「もう、指じゃ、イヤだよ……っ! 新に、抱き締められたい、新を抱きたいの……! だから、私に、中に、来て……っ!」
 新の頭の中が白く焦げ、そのまま千早の中に入れようとした時、自分の声が閃光のように脳裏を走った。
『力ずくで入れて、妊娠するかも知れんとか全部無視して、中で出す事かって出来たんやぞ』
 ほんの数日前、千早を犯しかけてまで諫めた時に新自身が口にした事だ。そして千早の身体だけが目当ての男なら思い留まったりせずに、新のその言葉を実行に移してしまうだろうとも。それは言い換えれば「千早が好きな自分は思い留まれる」と告げたに等しい。
(……自分の言葉も守れん男には、なりとない……!)
 そのまま挿入して千早を感じたい、中で放ちたいという欲望は新も当然持っている。それでも、と唇をきつく噛む。
(今、おれが自分の欲求のままにやって、後で千早が泣くような辛い思いさせたりするとか……それだけは絶対、絶対嫌や!!)
 身体の下で怖がって涙を流していた姿を強く心に浮かび上がらせ、きつく目を瞑り腰を引き戻す。千早を泣かせたくないという言葉を呪文のように頭の中で繰り返し、ようやく切れ切れに口にできた。
「っ、お願い……や、ゴム……着ける、間だけ……、ちょっと……っ、ちょっとだけ、待って……!」
 言い終わる前に必死の思いで身体を離し、本棚の奥に隠したコンドームの箱を引きずり出した。何冊かの本がその勢いで雪崩れ落ちたが、構う事なく個包装を破り捨てて慌ただしく装着を終える。

 一度身体を離した事でほんの少しだけ落ち着きを取り戻せはしたが、全身にかいた汗で艶を放ったまま横たわる千早の前に、そんな物は呆気なく崩れ去る。
「ちはや、千早……! 全部……入れるざ……っ!」
 何を口走っているかなど自分自身もう理解出来ていない。千早の脚を大きく割り広げて猛った自分を押し当てると一気に突き入れて身体を倒す。新を抱き締めたいと待ち望んでいた千早の両腕が背中に縋り付くようにきつく回された。
「……っ、あっ、あ……、居る、い、居るの、新が……! っう、あぁぁんっ!」
 泣きじゃくっているような声が鼓膜から新を引きずり込み、抱きついている力が強まる。
「もっとや、もっと欲しい、千早っ! もっといっぱい、おれを欲しがって……!」
 新も両腕を千早の脇に差し込んで、背中が撓るほど抱いて動き始めた。

 「あぁ、あっ! っあ、あっ、んぅ……っ! は、あぅん! ああ、ああ……っ、あっ、新っ!」
 深い所に送り込もうと密着した身体が立てるリズミカルな音がする度に、あらた、と呼ぶのさえ精一杯に聞こえる切なそうな喘ぎが千早から紡がれ、さっき指で感じ取った内側も新の動きに合わせてきつく、きつく締め付けてくる。
「……千早、すごい、中……っ、いい……!」
 それでもさっき見せたような激烈な反応を上手く引き出せない。あの一カ所だけ違う感触がした部分を上手く擦れない、と歯がゆさを覚えた時、ふと閃いた。
(探せば、いいんや。千早のそこに、当てやすい格好……)
 そう思った新は腰を引くために一度抱擁を解いて、その身体の前半分にある千早の中を探れるように、片手で根元を支えて指で見つけたのと同じ角度で、先端に神経を集中させてゆっくり引き抜く。
(……ここ、や。ほやけど、どうしよ。正面にってなると今の角度やが。千早の腰、っていうか……お尻の方かなり持ち上げんと難しないか……? ……あ、何か分かった)
 マスターベーションの時に脳裏に描く、入る角度が変わって一気に感じ出した千早の姿。あの時は左腕で片脚を持ち上げて大きく開脚させた。
(両脚抱え上げれば、千早の弱いとこがおれの近く来る。脚そんな大きく開かせんくていいんやし)
 試してみよう、と新は千早の長い脚を左右の肩に担ぎ上げて上体を少し倒し、指で探った時と同じ角度になるよう注意深くインサートする。

 「っ、ひ……っ?! ダメっ、そこダメぇ!」
 どうやら上手くいったらしい。千早の声がまた変わり、慎重に腰を動かすとその中もさっきより強く強く新を締め付けてきた。
「ま、たっ、さっき、みたいになっちゃう! ああっ、んぁ……っ! 新っ、だめ、私っ、あぁんっ! もう、もうダメえっ!」
「……っ! おれも、いきそうなんや……っ!」
 指を動かせなかった、あの強烈な締め付けがまた起きた。単に締まるだけでなく、時折少し緩むと今度は新を最奥まで引き込もうと蠢いて、またぎちぎちと締めてくる。無意識に探り当てた千早の手を繋いで激しく腰を突き入れた。
「あっ、ダメっ、いく……っ! やあ、ダメ、もうダメ……っ! い……っちゃう、いっちゃうよ、新!」
「もう……だめや……! 千早、っ、我慢、せんと……いって……! 一緒に……!」
 新の切羽詰まった声がついに千早の堰を切った。
「いく、新、いくっ! ───っ、あっ、んっ!!」
「……くうっ……、っ……!」
 千早はまた身体の内と外を同時に引きつらせ、新の腰はぶるっと震えて千早のひくつくそこに熱を放つ。二人の身体ががくりと布団の上に落ちたが繋いだ手だけは離さなかった。




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written by Hiiro Makishima