保湿系トライアルセット

Mine Side-C 4

R18版



 部屋に戻ってくる新の足音や、襖を閉める音が聞こえる。薄く目を開けた視野に、服を脱いでいる新が映った。流石にそれを直視できない恥ずかしさや今から始まるだろう未知の体験。そっと寄り添ってくれた新の暖かさがそれらを雪のように解かしてくれる。
「ごめんな、なんか雰囲気ぶち壊して。……白けさせてもたかな」
 そんな事はないと新の頬を撫でる。その時新に告げ忘れていた事が一つあったと思い出した。
『きっと千早もそうやと思うけど、おれ、キスした事さえない』
(がっかりさせるかも知れないけど……新に嘘は吐きたくない。だから……ちゃんと言おう)
 意を決して、キスだけは二度目なのだと口にする。退部絡みの話で太一の地雷を踏んだ事。そんな無思慮さに腹を立てた太一が怒りながらキスしてきた事。全て正直に話したが、新の顔に驚きはないように見える。
「だけど……だけどね。私が自分の意志でキスしたのは……今のが初めてで、キスされて嬉しいって思ったのも、初めて。……信じて、くれるかな……」
 それも掛け値なしの本音だ。目の前の新が頷いてくれた事が本当に嬉しかった。

 そっと千早に覆い被さってきた新が口を開いた。
「もっぺん、キスさせて……?」
 どこまでも自分を怖がらせたくないと思っているらしい。
「さっき言ったのに。聞かなくて、いいって……」
 そう返すと困ったような笑みが新の顔に浮かぶ。新の頬を撫でていた手をそっと取って繋いでくれ、また優しく口付けてくれた。
(新のキスって……気持ち、いい……)
「ん……っ」
 その不思議な感覚が上げさせる、吐息混じりの声を隠さないでいようと深くなっていく新のキスを受けていく。

 (身体がどんどん熱くなって流されそうなのに、それでもいいって私、思い始めてる……)
 そんな事を考えていたら不意に耳にキスをされ、その途端、千早の身体に甘い電流のような刺激が走る。
「あ……っ」
 意識などしていないのに、身体が跳ねた。繋いでいる手にしっかり指を絡めるとまた、唇が耳元に触れた。
「……あ、んっ!」
(こ、れ……何?! 一瞬、何も考えられなく、なる……)
 耳にキスされると身体の奥が熱くなって、この間は強引に擦られたそこに切ない感覚が生まれるのを今度こそはっきり自覚する。
「千早……、千早、好きや……、大好きや」
 強く抱き締められて囁かれる声にさえ、身体が反応してしまう。

 新の片手が躊躇いがちに下りてきて、そっとブラを外してくる。少しだけ目線を下げると、辛そうに眉を寄せている顔があった。
(……この前の事……気にしてるんだ。……新だって初めては、きっとこんな風にしたかったんだ……)
「見ても……いい、よ……」
 少しだけ震える声を返すと、新が目を瞠っている。自分が言った事に驚いたのだろう。けれどすぐに柔らかい表情に戻って千早の胸元に視線を戻す。
「綺麗、やな……」
 その呟きに言葉を返すより先に、新の唇がそっと胸の先端を含んで柔らかく吸い上げ、舌が触れてきた。
「んっ……やぁ、新……」
(……耳にキスされた時より、凄、い。胸の中が切ないのに甘くて……新が触ってない方まで、張って、尖ってく……)
 感じるままに背中を反らして呟いた時、新は唇を離した。

 「……怖い、か?」
 怖くはない。ただ身体の裡から沸き上がってくる、この甘い感覚を言い表す言葉が見当たらなかった。そう答えると眼鏡越しの瞳に安堵が浮かんで、また胸元に優しいキスを落とし始める。
「……あ、あ……っ、んっ、新……、あらた……」
 名前を呼んでいないと、自分が千早だという事さえ頭から蒸発しそうだ。肌のあちこちを彷徨っている、新の手。それでもっと触れて欲しいと思ってしまう程、頭の中が溶けていた。
「……脱がすざ?」
 新が静かな声で告げて、たった一枚身体に残っていたショーツをゆっくり引き下ろしていく。脱がされる事を自分の意志で受け入れたのに、少しだけ身体が震えた。恥ずかしいのは確かだが、身体を逃がしたいとは思わない。下着が爪先から抜けた感触で自分が裸になったと分かる。

 新の喉がごくり、と鳴る音まで自分の耳は拾ってしまう。かるたでは大きな武器になる聴力が、今だけは恨めしい。
(そんなの聞き取って緊張したら……きっとまた新は心配してしまうのに……)
「痛かったら、ちゃんと言ってや?」
 気遣わしげに言う新の大きな手が腿を撫で上げて、千早の襞をそっとそっと開いて指先で触れてきた。
(わ、私……、そんなとこ……濡らしてるの……?)
 触られた事で自分が湿っているのだと分かる。ゆっくり探ってきた指が、この間はきつく擦り上げてきたそこに優しく触れた。その途端に今までとは比べものにならない甘くて熱い感覚が、新の指がある粒から一気に身体全体に広がる。
「んっ、あぁ……っ! 新、新……っ!」
 感じるまま上げていた声さえ、一気にトーンが跳ね上がる。それでいてソフトに指が行き来しているそこが充血して、じわ、とそこがまた濡れていくのが分かった。

 「……千早……、見、ても……いいか」
 普段聞かない、掠れたような声が問うてくる。さっき気遣わしげに怖いかと尋ねていた時と違って、そう新自身が求めている響きがその声にあった。
(新が……やっと、この前の事気にしてじゃなくて、そうしたい、してもいいか、って言ってくれてる……)
 恥ずかしさは確かにある。だけど初めて結ばれるなら新と、と望んでいたのは自分だ。応えてあげたい、そんな気持ちがどうにか声になる。
「恥ずかしい、けど……。あ、新なら……、新に、だったら……、構わ、ない」
 ついつい声が小さくなったけれど、ほっとしたような息遣いが聞こえ、新が身体ごとずり下がるように頭の位置を変えてきた。

 「ちょっとだけ……膝、曲げてくれるか……?」
 応じると、腿の内側に手を触れさせて新が大きく自分の脚を割り広げる。
(……顔から、火が出そう……!)
「こんな事言うと、蹴飛ばされるかも知れんけど。……ここ、って綺麗やのに、すごく、エロい。……見てるだけで、おれ暴発しそうや」
(エロ……っ?! っていうか……暴発って……、まさか、言ってた事と関係、してるの……?)
 中で出す事も出来た、と苦しそうに言っていた。今は全く状況が違うが、その「中で出す」前に外で出てしまうという事だろうか。
(……でも、分かる。時々……触れ、てる。……新が、新のが、そこに……)
 肌が感じ取った新のものを自分の身体は受け入れきれるのか、という兆した疑問を素直に聞こうと千早は口を開いた。




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written by Hiiro Makishima