Mine 2
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「お茶淹れるわ」 新自身、冷静さを取り戻したくて千早を先に部屋へ行かせ、自分はキッチンで普段よりゆっくり目にお茶を淹れる。千早が疲れたと言っているのが襖の向こうから聞こえてきた。どたっ、という音は千早が鞄を下ろしたのだろうか。 「お待たせ、って……何ちゅう格好してるんやし」 茶盆を手に部屋へ入ると千早が畳の上で大の字になっている。あまりにも目の毒すぎて、持っていたお茶ごと新は一旦キッチンに退却し、深呼吸を繰り返した。 「……行儀悪いで起きね」 調理台の上に茶盆を置いて、少し強い口調で新は部屋へと声を掛ける。 「え、あ、ごめん」 どうやら座り直してくれたらしい。行儀の事もあるが、千早のそういう無防備さについて一度真面目に話した方がいいだろう。新は気を引き締めて、何も持たずに部屋へと戻った。 「ちょっと、真面目な話あるんやけど」 きちんと正座して新は口を開く。 「あ、うん」 バツが悪そうに笑っていた千早も、真面目な話と聞いて表情を戻しそれに倣ってきた。 「……さっき行儀悪いって言ったやろ。それもやけど、スカート履いてるとかに無頓着すぎや。少し気い付けなあかん」 千早にそんなつもりがないのは分かっているが、新は話を続ける。 「煽ってるとか、誘ってるって受け取られる事かってある。……特に、おれらぐらいの年代は、おれ個人に限らんけど性欲かって強いんやから」 そんな無防備な格好を見せられると、男はセックスへの衝動を抑える事が難しくなる。普段は照れて口に出来ないストレートな単語を新は敢えて使った。 「ごめんなさい。……聞いても、いいかな」 新が話を促すと、千早は少し考えてから問いを口にしてくる。 「……今、言ってた……衝動の事、なんだけど……。その、無理矢理、とかって……意味、なのかな」 「見境なくなれば、千早をレイプできる。……男は」 自分でも忌み嫌う行為はしたくないと強く思っている。倫理観としてもだが、セックスという行為は結婚してからという価値観を持っているからでもあった。ただ千早に危機感を持ってほしいという今の本題とは逸れるし、新が実行に移さないと知って安心されていい場面ではない。できれば一般論で納得して欲しかった。 「……新は、そんな事しないよね」 そんな言葉が返ってくる。 「出来ないよ、新は」 「……!」 新の身体にぐっと力が入る。千早がどういう意味で口にしたのかは分からない。けれど自分の男としての部分を軽んじているような印象と同時に、この問題をまだちゃんと理解していなさそうな口調がひどく嫌だった。 (……おれだけでのうて、他の男からされる可能性かってあるのに、何でほんな脳天気な事言ってるんや……!) 千早が口にした、地雷を踏むような言葉への腹立たしさが新を突き動かした。 「おれが千早を犯せんって本気で思ってるんか」 唸るように言って一気に千早を畳の上に押し倒し、面食らっているうちに着ているブラウスの身頃をを力任せに左右に引き剥がした。 「……っ?!」 床にボタンが飛び散ったが構うことなく戸惑っている身体に体重を掛けて動けなくし、着けているブラも引き上げて乳房を露わにさせる。 「や、やだ、新……やめて……」 上にのし掛かっている新を押しのけようと手を動かす。その両手首を新は掴み、強引に床に戻させ動けなくさせた。 「……痛っ?!」 新はその言葉に一切耳を貸さず、千早を押さえつけたまま新は身体の位置を変え、淡いピンク色をした乳首を口に含み、上体を密着させてさらに体重をかけた。 「いやあ!」 千早の声が鼓膜に突き刺さる。 (……おれかって、こんな形で千早の裸、見たかった訳でない! こんな風にしたかった訳でない……!) そう思うのに、新のペニスはその気持ちを裏切って猛る。そんな自分が酷く厭わしかった。 片手は千早の手首を押さえたまま、もう片方の手首は自分の身体を押しつけて抵抗を封じ、新の手は千早が履いたままのスカートに潜り込み、ショーツを一気に腿の中程まで乱暴に引き下ろす。 「やめて! お願い、離して!」 千早が身体の上に乗っている新を何とか退かそうと藻掻いている。その間隙を付いてショーツを剥いだ手で襞を強引に開き、探り当てたクリトリスを千早が痛がろうが何だろうが全て無視して乱暴に擦りたてた。 「いやっ、新! 嫌、いやっ、イヤあっ!」 拒絶の言葉を繰り返す千早の身体は強張って震えている。 「……怖、い……、新、怖いよ……」 両目にみるみる涙が溢れ、伝い落ちて畳に吸われていく。 千早の口から「怖い」という言葉がようやく出て、新はきつく目を瞑り、先に進みそうだった衝動に必死で抗って、やっとの思いで身体を退かせて解放する。そのまま立ち上がり、千早の方を見ないまま押し入れの衣装ケースから長袖のTシャツを一枚取り出した。 「着ね」 後ろを振り向かず、服をぽいと背後に投げた。千早に男の衝動を分からせようとしたとは言え、乱暴した事には変わりない。その姿を直視できず襖の方を向いたまま新は座って両手をきつく握り込み、それでも足りないと唇を血が滲むまで噛んで、熾火のように自分の裡に残る性的衝動を必死に静めようとした。 (……元から、そこまでする気はなかった……ほやけど、ほやけど……!) 新の中にも挿入と射精の欲求はある。千早を押し倒していた時も、最後の一線を越えたがるその欲望だけは絶対にダメだと何度自分に言い聞かせたか分からなかった。 背中を向けたまま拳を握り込んでいると、何か言いたいのか千早がそっと手を伸ばしてくる気配に気付いた。 「触んなっ!!」 大声に背後で千早が小さく息を飲んでいるのは分かる。けれど振り向けなかった。 「……怒鳴った、事だけは、謝る。……ほやけど、今のおれは……普段のおれでない。千早を気遣う事も、優しく接する事も出来ん」 相変わらず千早を見ないまま、新は話を続けた。 「今かって、力ずくで入れて、妊娠するかも知れんとか全部無視して、中で出す事かって出来たんやぞ、おれは……」 軋るような声がかろうじて喉から出る。 「……おれだけでない。他の……千早に恋愛感情ない、身体だけ欲しがる男やったら尚更途中で止めんやろうし、最悪、人集めて輪姦する事かって……出来るんや……」 千早にとんでもなく酷い事をした事と、今そんな話をしているのに、まだ去ってくれない欲求への自己嫌悪が新の声を震わせてしまう。 一際きつく拳を握り込んで、絞り出すように言葉を投げた。 「ボタン拾って、……帰って」 そう告げるのが精一杯だ。背後で千早が飛び散ったボタンを拾い上げている音は分かる。それでもやはり新は振り向けない。 「……ごめんなさい……」 千早の短い声、微かな足音が聞こえた後、部屋の鉄扉が閉まる音が新の鼓膜に飛び込んだ。 「おれは……最低や。何かにつけて千早泣かせて。……あんな酷い事までして。冷静でなかったからって、怒鳴りつけて……」 低く呟いている新の側にきらりと光る小さな物があるのに気付き指でつまみ上げると、それはブラウスを引き剥がした時に飛んだボタンだと分かる。千早が拾い忘れたのだろう。あるいは怯えて新の近くにあった一つは拾えなかったのかも知れない。 「千早……ごめん。本当にごめん。……っ、ごめんな……っ! 千早、千早……、ごめん……」 ボタンを握りしめて、新は泣いた。 |