保湿系トライアルセット

さびしさに 

R18版



 「……掛け布団、使う?」
 周囲の部屋に聞かれても何だと、新が問うと千早は黙って頷いた。それを受けて新はエアコンの設定温度を少し下げ、掛け布団の端を捲り上げて千早に呼び掛ける。千早は素直にそのスペースに横たわり、新が入ってくるのを待った。
「よいしょっと。……薄暗いのはちょっと残念やけど」
 千早の隣に身体を横たえながら、新は布団の中だと千早の表情が見えづらくなる事をぼやく。
「……私は、この方が好きかな。……何か、新が私の周りにたくさん居て、全員にふわっと抱き締めてもらってるみたいだし」
 千早が小さく笑い声を上げながら答えてきた。
「それ……おれの匂いがするで、って意味?」
「うん。……新と、こういう事するの……正直まだ慣れないし恥ずかしいけど、こうやって包まれてると、変になってもいいんだ、って言われてるみたいで、安心できて嬉しいの」
 千早の言葉が新の心を鷲掴みにする。
「……ほんなら、なって? ……変に、の」
 そう告げて新は千早の上に掛け布団ごと覆い被さり、唇を奪う。

 「……ん、……っ」
 くぐもった吐息がキスの合間に零れ、鼓膜から新を熱くさせる。帰省していた間我慢していた事もあって、ボルテージはあっと言う間に高まってしまう。さっきの言葉通り千早をもっともっと「変」にしてやりたい、と口付けを深くして舌を捉えた。
「ふ、……ぁっ、……んッ……」
 千早の指がTシャツをきゅっと掴む仕草や身体の下にある柔らかい起伏に煽り立てられ、千早を「変に」するという思いさえ蒸発して、一刻も早く彼女の中に自分の熱を埋めたいという欲が完全に新を支配してしまった。
「千早……っ」
 新の片手が千早のTシャツの中に滑り込み、もしかしたら初めての時より焦っているような手つきで、千早が着けているブラをぐいと一気に引っ張り上げる。かなり強引に剥き出しにした柔らかな胸を新の大きな手の平が包み込み、いつもより強く揉んだ。
「きゃっ?! ……あ、ンっ!」
 千早が思わず上げた小さな悲鳴は、先端をこね回す新の指先でそのトーンが甘く変化する。それを耳にした新は大慌てで自分のジーンズの前を開け、今度は千早のスカートの中に勢いよく手を滑り込ませると、面積の小さいショーツをもどかしげに脇に寄せた。

 「え……っ? 新、ちょ……っ、待って。私、まだ……」
 準備が出来ていない、と言おうとした所に、新の指が千早の襞を掻き分けて、一番敏感な核を擦りあげた。
「あッ?! ……っや、んっ、そ……れ、ダメ……っ」
 普段と違って、一刻も早く受け入れられるようにと新の指は荒々しく千早をまさぐっている。快感というより敏感すぎる場所への強い刺激で千早の身体がびくんと跳ね、それをどう受け取ったのか、新は千早の両脚の間に自分の身体を置き、はち切れそうな熱を押し当てて腰を沈めようとする。が、新が焦ったのか千早が藻掻いたのか、新のものは狙いを外れて千早のそこを下から上にずるりと滑った。
「……っ?! 嘘、やろ……っ?! う……っ、……ぁ……ッ!」
 千早の身体の上で、新の全身が何度も断続的に痙攣している。震える度に、剥き出しになったお腹の辺りに熱い感触が伝わってきたから、新の顔は伏せられたままだが状況は理解できた。
「く……、はぁ……はぁ……っ……」
 脱力した新が体重を預けてくる。千早は身体で受け止めながら、新の背中にそっと腕を回した。

 「───っ、ごめんっ!」
 千早に抱き留められた事で現状を把握した新は千早の上から身体を退かせながら、大慌てで詫びた。いくら帰省中我慢していたからといって、あっさり暴発してしまっただけでなく、完全に自分だけの欲求で動いてしまった。申し訳なさと恥ずかしさで千早の顔が見られない。
「謝って欲しい訳じゃないよ。……でも、嫌じゃなかったら、訳を教えてくれる?」
 答えるのも恥ずかしい事だが、勝手な事をした今の自分に拒否権はない。普段通りに聞こえる千早の声音に励まされるように、ようやく新は視線を千早に戻した。
「うん……。おれ、実家帰ってた間さ、……実は、いっぺんも……せんかったんや。……その、自分で、って意味でやけど……。ほんで今、千早とこうしてたら、なんかもう、止められんくなっつんて……」
 新は大きな溜め息を吐く。
「ほやけど、こんなやり方……自分勝手すぎやった。ほんとに……、本当にごめん」
 これではまるで獣だ、と新は嫌悪感も露わに吐き捨てた。

 「……私さ、男の人のそういう欲求って、実際のとこ良く分かんないんだけど……自分でする、って今言ってたでしょ? 単純に疑問なんだけど、そういうのって、やっぱり必要なのかな」
 千早の問い掛けは一般論のようだが、新にしても他人のこういう面はあまり分からない。
「おれも自分の事しか分からんけど……、必要かどうかで聞かれれば、やっぱ……時々は、うん……」
「合ってるか自信ないけど……ガス抜き、みたいな感じ?」
 問うてくる千早の顔には、茶化すような素振りは微塵も見られない。だから新も素直に頷く事ができた。
「そうなんだ。……今はもう、平気? って聞いていいのか分かんないけど……」
「……うん。平気、って言うていいか、おれも分からんけど……。って、あ……ヤバっ」
 謝ることに必死で、汚してしまった千早のお腹を拭いていない事に今更気が付き、新は大慌てで起き上がり本棚の上に置いてあったティッシュペーパーの箱を手にして戻ると、千早の傍らに膝を付いて後始末を始めた。

 「あ……ごめん。千早の服、汚してもた……早めに洗濯せんと、あかんなこれ……」
 自分の放ったものが千早の着ていた服にもかなり飛び散って、不規則な形の染みを作り始めていた。
「えっと千早。サイズ合わんかもやけど……帰る時、おれの服どれでも着てってくれるか? 今日の服、おれ洗濯して返すで」
「え? ……あ、うん。でも洗濯ぐらい、自分ちでするのに」
「いや……流石にこんなもんの染みある服、千早んちの人に見せられんしさ。それと……さっき言うてたやろ? 服借りた詩暢ちゃんが羨ましいって。ほやで」
 新の言葉を聞いた千早の顔がぱあっと明るくなる。
「あ、そっか! じゃあ、遠慮無く借りちゃう!」
 にっこり笑いながら頷く顔を見ていると、少しだけ新の心も楽になるようだった。
「うん、好きなの選んで。……お腹んとこも汚しつんたし、シャワー使うか?」
「んと……それ、後でも、いいかな……?」
 不意に千早が問いながら、新に柔らかく抱きついてきた。
「……続けて、いいんか? ……千早……」
 腕の中の千早が小さく頷くのを見て、新は今度こそゆっくり身体を倒していった。





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written by Hiiro Makishima