保湿系トライアルセット

It's time to say... 3

R18版



 「千早……っ、おれ……もう、堪え、られん……」
 絞り出した声は自分でも驚くほど掠れ、欲に塗れたように聞こえる。身体の下で千早が身じろいだ。戸惑っているのかも知れないと、新は不安に駆られる。
「新……。うん……」
 今の新にとって一番欲しい言葉が千早の口から与えられる。その健気な顔に一つ頷きかけ、新はジーンズと下着をまとめて脱ぎ、それから千早のショーツを丁寧に引き下ろした。柔らかそうな飾り毛を目にした新の喉がまたごくりと鳴る。

 千早の上に覆い被さった新は脚の間に自分の膝を差し込んで隙間を作り、片手をその隙間に這わせ、入口を守るように閉じている襞をそっと開いた。探る指先に千早が熱くしっとり濡れているのが伝わり、新の心拍数が一気に跳ね上がる。
「……んッ、あ……ぁっ」
 膝で作った隙間をさらに広くして、新は自分の身体をそこへ滑り込ませる。位置を確かめようと指先で開いたピンク色をした内側が濡れて艶を放っているのが見えては、もう我慢など出来る筈もなかった。

 「千早……いい……?」
 こくりと頷くのを確かめた新は限界まで忍耐を強いてきた塊を、さっき確かめた位置にあてがってから、千早の両脇に腕を差し込んで身体を支えると、そっと腰を沈めていく。
「う、あぁ……っ、つ……うっ……!」
 千早の唇から苦しそうな呻きが漏れる。
「……やめ、よう……か?」
 千早の受ける痛みがどの位か全く分からず、新は途中で腰を止めて聞いた。しかし額に玉のような汗を滲ませながらも、千早はかぶりを振った。
「ありがとう……の。……ちょっとだけ、我慢、して……」
 その健気さを無駄にしたくない。新は奥歯をきつく噛んで千早の中を進んで行く。
「……く、う……っ、───んッ!」
 何か突き抜けたような感じがしたと思った瞬間、千早の中に新が全て収まった。

 「はぁっ……んっ、はぁ……」
 痛みを堪えていた千早の息が荒い。そうまでして受け入れてくれた事に新の目がじわりと滲む。
「千早っ……千早……。好きや、すごく、好きや……っ」
 譫言のように繰り返す新の背中に、千早が腕をそっと回してくれた。
「私も……、好きだよ……」
 視線が交わった後、新はようやくゆっくり動き始める。
「く……っ」
 散々我慢したところに加えて、千早の中は熱くて狭く、とろける蜜が新に絡みつく。
(うわ……こんな、いいって……思ってもみんかった……。気ぃ抜いたら、一気にいってまう……!)
 全部が入り切る前に放ってしまっても不思議ではなかったぐらいなのだ。それでもなるべく長く一つで居たいと、新は歯を食いしばり、千早の中を行き来する。

 最初はぎこちなかった新の動作が少しずつリズムを整え出すと、徐々に千早の吐息が熱くなっていくのが感じられ、新の心が震える。
(……嬉しい。千早が……おれで、感じてくれてるって、分かる……)
 もっと千早に感じてもらいたい、そしてそれを感じたいと新の送り込む腰に力強さが加わった。
「あ、新ぁ……っ、私、何か、ヘン……っ!」
 泣きそうにも聞こえる切れ切れの声で、千早が告げてくる。
「……変、って?」
 聞き返すだけでも自分が腰から溶け出しそうで、千早の片手にきつく指を絡めて握ると、それを喜ぶように千早も絡めた指に力を入れてきた。
「わ、かんないけど……身体、どんどん……熱く、なってる……」
「変で、ない。……おれかって、そうや」
 上手く伝わったかどうかは自信がなかった。
「あ……んっ、やぁ……熱、い……」
 それでも千早のあげる声がぐっと甘さを増し、より素直に自分がどう感じているかを新に伝えて寄越し始めた。

 その間にもどんどん熱くなって絡みついてくる千早の熱と柔らかさが、とうとう新を飲み込む。
「……う、あかん……っ! も……無理や……っ、おれ……!」
 新がいきなり全速で動き出し、千早は新の手と背中に、命綱のように必死に縋り付く。そうでもしないと内側でどんどん生まれる熱い波に呆気なく浚われてしまいそうな気がした。
「……っ! 新ぁっ……! んっ……! ダメ、何か、変、なの……っ!」
 仰け反った千早が無意識なのか、新の腰に白く長い脚を絡ませた途端、繋がりが更に深くなり、新の目蓋の奥で火花が散った。
「ちはや……っ、……い……くっ!」
 引き締まった腰が大きく震える。
「……っく、……はっ、……はぁっ……」
 同じように震えている細い身体をきつく抱き、新は何度もぶるりと身体を震わせながら全てを迸らせた。

 身体から力が抜けた新が千早の上に倒れ込んできた。滝のように汗を流し、荒い息を吐いている。その様子を初めて目にした千早は新の事が心配で声を掛けた。
「新……大丈夫……?」
 そっと呼び掛けると突っ伏したままの新の肩がぴくん、と揺れたが、新の体勢は変わらない。
「……新ってば。大丈夫なの?」
 少し声を大きくして呼び掛け直すと、今度は弾かれたように新はばっと顔を上げてきた。
「だ、大丈夫……?」
「……え? ……あ、うん。……平気や」
 三度目の問いでようやく新が口を開くと、顎の先から汗の雫がぽたりと降り注ぐ。

 「うわ、ごめん。……重かったやろうし。……ごめんな」
 千早の肩から手を離し、新は両肘で自分の体重を支え直した。
「あ……ううん、そんなに重くないし……。それにね、変かもだけど……何か、嬉しいっていうか……」
「……って、何が?」
「うん……新が、居るんだなあって。目や耳より、はっきり実感出来るっていうか……。って、新?」
 顔にまたぽつりと熱い雫が落ち、視線を上げて千早は目を見開く。落ちてきたのは汗ではなく、新の涙だった。
「え、ちょっ、新? ……わ、私なんか悪い事言っちゃった?!」
 新はかぶりを振ってから、ゆっくり口を開いた。
「おれ……も、なんや。……焦りとか、感じてえんって言うたけど……。今、千早に言われて、分かったんや。……この一年。千早が好きやって分かってからの一年な、おれずっと、今日を……待ってたんやって……。それが叶ったのが、嬉しいんや……」
 新は片手で顔から眼鏡をむしり取り、乱暴に目元を擦る。千早はそっと手を伸ばして新の頬を撫でた。

 「あ……いや、ええと……今日、って言ったかって、別に、その……こういう事だけ待ってたって意味でないざ? ご、誤解せんといての?」
 少し冷静さが戻った途端、今自分が口にした言葉が「千早を抱ける日を待っていた」とも取れる事に気付き、新は眼鏡をかけ直して慌てて言いつのる。その姿が千早の目には何故か可愛く映る。
(……不思議。男の人を可愛いって思うとか。……さっきまでの私だったら、そんな事思ったかな……)
「誤解はしてないけど……、何だかね、どっちの意味だとしても今は……構わないかな。どんな新も、新だから」
 自分を見下ろす新の目が大きく見開かれている。その顔にまっすぐ視線を向けて、千早は笑いかけた。
「……わ、ヤバっ……」
 狼狽えた声を上げた途端、まだ千早の中に留まっていた新がぐっと嵩を増して、千早もその声の意味に気付く。
「えっと……何で、とかって……」
 新が再び兆した理由を尋ねていいものかどうか分からず、千早は口ごもった。
「……千早が可愛らしい事言うでや。……バレてるで言うけど、男の身体って正直やよ。……誤魔化す事も出来んし。幻滅、させたかの」
 少し膨れたように答えた新は長々と溜め息を吐く。

 「しないよ、幻滅なんて。さっきも言ったけど、どんな新だって、やっぱり新だって思うから。……私だって、新をがっかりさせてる事多いと思うし……近江神宮で倒れた時とか」
「……全然? あんな酷い熱やのに二試合も頑張った千早の、何をがっかりせなあかんのやし?」
 お互いに自分が相手を幻滅させていると言い出して、完全に話が平行線になる。先に気付いた新はふっと苦笑を押し上げた。
「どっちがガッカリやとか、何を競ってるんやろ、おれら。……お相子やな」
「……あはは、ホントだ。……うん、お相子でいいよ」
 千早の額に、新は自分の額をこつんと当てて一緒に笑う。千早がクスクスと笑う度に息が頬を撫で、一旦治まりかけたボルテージがまた元に戻ってしまった。
「千早、身体……痛かったり、する? 今……」
「……え? 平気だけど」
 見上げてくる大きな瞳に向かって、新は思い切って言う。
「……もう一回、したい」
 答えの代わりに千早の腕が伸び、新の首をそっと抱いてきた。



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written by Hiiro Makishima