It's time to say... 2
|
自分を抱き締める新の両腕は、想像していた以上に力強く、千早の息が詰まりそうになる。 (……あ、けど……) 息が苦しいのは確かなのに、それが嬉しいと感じている自分に気が付く。千早は新の抱擁の下をかいくぐって腕を動かし、新の背中に両手を回した。千早も腕は長い方だが、こうして直に腕を回すと、試合の時に見ていたよりも新の背中は広いと分かる。 「千早……おれ、経験ないけど……ある程度は自分でも分かるで、言うわ」 「……え?」 新が深く息を吸い込む。 「おれ、千早が欲しいのは、ホントや。無理矢理するとかは絶対嫌やけど……おれかって、男なんや。いっぺん火ぃ点いつんたら、止められん。……ほやで、今しかないと思う」 緊張しながらも、新の声音は驚くほど真剣さを帯びていた。 「わ、私が……決めるの?」 「……千早かって初めてやって、さっきの話で分かってるで、千早に決めさせるのも卑怯なんかも知れんけど……おれ、千早の事傷つけたくない。千早泣かすぐらいやったら、おれが気まずい方が何倍もマシや」 そう言われて千早の心臓はまた早鐘のように鳴る。 「私……私ね、怖いって思う事があるの。……もし今、嫌って言って……新を傷つけてしまったら。……我が儘だけど、新が私のこと、嫌いになったらって……。それが怖いの」 新が少し腕を緩めて、千早に視線を合わせてきた。新が何と言うつもりか分からず、千早は息を飲む。 「決めろって言うたの、おれや。嫌いにとか……なる訳ないがの。……まあ男としてちょっとはショックかもやけどさ? 千早に委ねる以上は、千早が出した答えに従うし、その覚悟なかったら、おれかってここまで言わん」 (委ねる以上出した答えに従う……新は、私に好きって言った時から……決めてたんだ。今の事だけじゃなくて……私からの返事とか、そういうのも全部ひっくるめて……) 千早は軽く目を伏せ、自分の心に問い掛ける。もちろん未知への恐れは千早の中にもある。それは肉体的な事だけでなく、新を受け入れた後自分がどう変わるのか分からないという意味もあった。 (……だけど、新に抱き締められて、息が苦しいのは部室での時と同じなのに、私……嬉しいって思った……だから……) 今はこの瞬間の気持ちに正直でいればいい。新が自分を尊重するという、その気持ちを信じようと千早は決めて目を開く。 「……新」 「なに?」 「あ、の……私、初めてだから……優しく、して……ください」 新から視線を逸らさず、千早は震える唇で言い切った。 「うん……約束、する……」 答える新の息も震えている。新の背中に回していた手にそっと力を入れると、新は両腕で千早の背中を支えてゆっくり身体を倒してきた。 両腕に身体を預けて床に仰向けになる千早の姿に、新は胸が詰まりそうだった。 「千早……好きや……」 もう一度そっと唇を合わせると、千早は素直に応じてくれる。呆気なく崩れそうになる自制心を必死に保ち、千早を怖がらせないようにと何度も頭の中で繰り返しながらキスを深くしていった。 「……っ、……」 身体の下で千早が小さく身じろぐのが伝わってくる。怖いのかと様子を見るが、千早の身体も自分と同じに熱を帯びてきているのが洋服越しにも分かり、新は少しだけほっとして、本や映画で囓っただけの知識だが、そっと自分の舌を差し入れてみる。 「……んっ……!」 舌先が千早の舌に触れた瞬間、自分より細い身体が震える。 (うわ……何か、ドキドキする……) 新自身、舌が捉えた濡れた感触に肌がぞくりと粟立つのを感じた。身体が震えた瞬間唇が離れ、自分が思った以上に息を乱しているのに今更気付く。 「……なんか、凄い……」 のし掛かったまま千早の顔の脇で呟くと、急に千早の身体が跳ねた。 「……っ、……な、にが……?」 「いや……千早とキスするのって、こんな気持ちいいって……知らんかったでさ……」 「ふ……っ!」 新が口を開くたびに、千早がびくんと肩を竦める。 (……もしかして、千早って……耳、感じやすい……?) 確かめるように千早の耳朶に新はキスをしてみる。 「……んっ……!」 また身体の下で千早が跳ね、今まで一度も聞いた事のない艶めかしい声が新の鼓膜を打つ。その声音は新の疑問を確信に変えた。 「千早……ここ、感じるんや?」 耳元にキスをしながら尋ねると、千早の顔が見る見る真っ赤になる。 「……恥ずかしいから、聞いちゃ、やだ……」 「ほんなら聞かんとく。……ほやけど、嬉しい。おれきっと、下手やし……ほんなんでも、千早が……良うなるんなら、嬉しい」 言葉を紡ぐ間も、千早の背中はしなやかに反って新に答えを投げ返してくる。それが嬉しくて新は千早の首筋にもキスを落とす。 「っふ、やぁ……、なんか……ヘンに、なりそ……」 「……怖い?」 新のその問いに千早はぎゅっと目を閉じてかぶりを振る。 「全然、変でないざ。感じてる千早かって、千早や。……おれは、好きや」 (……もっと見たいとか言うたら、流石に怒られるかもの……まあ、本音やけど……) 千早が手を伸ばし、新の首を抱いてきた。新は逆らわず千早に首を抱かせ、代わりに自由になった片手で、千早のブラウスのボタンを外す。初めて目にした胸元はうっすら汗ばんで艶を帯び、新の目を釘付けにした。 ごくりと新の喉仏が上下する。ブラウスの身頃を開いて千早の肩が露わになると、腰のところで蟠った熱が張り詰めて痛みさえ感じる程だった。 「千早……ちょっと、背中……浮かせて」 「……え? ……あ、うん……こう?」 腹筋運動の要領で千早が上体を少し持ち上げて出来た隙間に新は両手を差し込んで、ブラのホックを外した。少し強引かとも思ったが、無理な体勢を取っている千早が苦しいといけないという気持ちの方が大きかった。 「……きついやろ、ほんな格好……」 言った途端千早はぱたりと仰向けに戻る。片腕を折り曲げて目隠しにしているが、それでも千早の胸が形良く盛り上がっているのは新の視線に飛び込む。驚かせたくない、と新はもう一度唇を重ねた。 「ん……」 さっきのように舌を絡めると、くぐもった声がまた耳を打ち、千早の手はまた新の服の袖を掴んでくる。キスをしたまま、新はずらせた手を千早の胸にそっと触れさせた。 「───っ!」 合わせた唇の間から漏れる千早の声音がまた変わる。耳元にキスをした時より大きく身体が跳ね、上げる声はいっそう艶めかしい。手の平が感じ取っている男にはない柔らかさが新のなけなしの理性を吹き飛ばしにかかっているのが分かる。 (……自分だけの欲求で進んだらあかん……千早に無理させるぐらいやったら、途中で暴発しつんた方がマシやって、思ってんのに……) 目にする千早の姿、耳を打つ声、触れた感触。その全てが新を惹き付けて止まない。キスを解いた新は身体をずらし、新の手の中でつんと上を向き始めた淡い色をした先端に唇で触れる。 「……っ、あっ……!」 新の唇が触れるたびに千早はきゅっと眉を寄せ、熱を帯びた声を紡ぐ。身体が動くたびにふるりと揺れる胸の先端は、間違いなくさっきよりはっきりと尖り、新の行為が的外れではないと教えてくれる。 「……おれも、暑い……」 新は一旦身体を起こし、着ているパーカーとTシャツを乱暴に脱ぎ捨て、再び千早に覆い被さる。素肌に直接千早の熱が伝わって心地良かった。また胸元にキスを落とすと、千早の指先に力が入り、新の背中を引っ掻くように動いていく。普段から爪を短くしているためさほど痛くはないし、千早のその反応が何より嬉しい。手の平を脇腹から下ろしていくと、千早が履いているスカートのジッパーを指先が探り当てた。 「……んっ……」 スカートが膝のあたりまで新の手で下ろされると、千早が小さく声を上げた。千早が身に着けているのはもう、男物に比べたら面積がひどく小さいショーツを残すだけになっている。そこから伸びるすらりとした脚が美しかった。 「千早……」 布地の上にそっと指を這わせてみる。 「……あっ、やんっ……! 新……っ」 千早の息が乱れ、閉じた脚を擦り合わせるようにもじもじと動かしているのがちらりと見える。 (……あかん、おれもう、限界超えそうや……) 散々我慢を強いたせいで、新のそこはジーンズの上からでも湿っているのが分かる程だ。千早の身体が動くたび、そこが押されたり擦れたりして、その度に新の腰に痺れたような感覚が走っていた。 |