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Chatting 2

新と太一のバカ話:話中のビデオには突っ込まないであげて下さいw



 とっぷりと日が暮れ、客用の布団が敷かれた部屋で新と太一は胡座をかいて四方山話に耽っている。初めのうちは共有できる話題を手探りで見つけ出すような所もあったが、そこは男同士喋っているうちに馴染んできた。
「……もう別れつんた後で聞くのって変やけど、太一、彼女ってどうやって知り合うたんや?」
「あー、中学の時サッカー部の試合あってさ。見に来てた相手校の女子に小学校同じ奴居たんだよ。で、そいつらが『この子真島くんの事好きなんだって』って連れて来てた」
「へえ……ほんで付き合いだしたんか」
「厳密にはちょっと違うんだけどな」
 太一は彼女と連絡先を交換するようになった経緯をざっと話す。
「昼間、言う事聞くし柔らかいっつってたのって、その子やろ? ……なんか、ほんとに凄い進んでるんやなあ」
「……何でそこ食い付くんだよ、新は……」
「ほやかって経験ないし、おれかって興味あるし……」
 答えに困った太一はがしがしと頭を掻く。
「言えるか、んな事! ……おれが持ってきた『土産』でいいじゃねえかよ。コンセント借りるな」
 乱暴に言うと太一は持ってきたノートパソコンを起動させ、ディスクトレイに持ってきたDVDをセットする。太一にしてもこういうビデオの無修正物は初めて見るだけに、パソコンを操作する指が少し震えた。

 「うわ、何か緊張するんやけど」
 まだ何も映っていないディスプレイに目をやりながら新が呟く。
「それを言うなっつーんだ。……んなの、おれだってそうだよ」
 太一が唇を尖らせて言い返すと、新は不意に小さく笑った。
「けど、何やろ。ほら、たまにゴミ捨て場とかに投げて(捨てて)あるが? エロ本とか。あんなのをこそーっと隠れて読んでる時とかさ、何か妙にワクワクした気分したりせんか?」
「あー、あるある。見るなって禁止されてっから余計気になるし、誰かと一緒に隠れて見たりすると特にな」
 かるた三昧の新にもそういう面があると知り、太一は少し安堵を覚えていた。そしてこうした背徳感を新と共有するという事にも楽しさを感じている。
「まあ健全な証拠だよな。……再生すんぞ」
「あ、うん」
 全く同時に二人の喉から固唾を呑む音が微かに聞こえる中、太一は指先でタッチパッドをなぞり「再生」にカーソルを合わせてクリックした。

 ビデオの製作会社のものらしいロゴが流れ、画面に学校の教室らしい背景が映し出された。
「え、学校なんかこれ」
「……って設定ってだけだろ。おれも見てねえから分かんねえって言ったじゃんか」
 あっても無くてもいいような話の筋に添って、映像の中の男優がブラウスにタイトスカート姿の女優を机の上に押し倒して服のボタンを引きちぎる勢いで引きはがす。剥き出しになった胸がぷるんと揺れているのが大写しになった。
「うわ……」
「すっげぇ……」
 男二人の口から期せずして短い言葉が漏れる。
『ん……あんっ、あぁ……ん』
 ノートパソコン内蔵のスピーカーからは画面の中の女優が漏らす艶めかしい声が少しずつはっきり聞こえてきた。
「……喋ってる時の声と結構違うんやな」
「演技、じゃねえの? ……良く分かんねえけど」
 何だかんだ言いつつ二人ともディスプレイから目が離せないでいた。

 女優の履いているタイトスカートが腰までたくし上げられ、押し倒されている机の上で両脚を大きく割り広げられる。カメラがぐっと接近し、モザイクがかかっていないビデオ画面一杯にそこが映し出されると、新と太一は再び固唾を呑んだ。
「親父の医学書以外で初めて見たかも、おれ」
「……おれマジで初めてやわ。……こんなんなってるんや……」
 太一と新がそんな事を言っている間にも、ビデオの中で繰り広げられる行為はますます激しさを増していく。
『んんっ……ん、ふぁ……、あん……やあ、ん……』
 スピーカーから流れる音声も喘ぎ声に混じってグジュグジュ、ぴちゃぴちゃと二人の鼓膜を刺激する濡れた音が聞こえ始める。
「咽せたり、せんのや……って言うか、めっちゃヤラシいな、これ」
「ヤラシいのは当たり前じゃんか。これそういうビデオなんだからよ。……っつか一々感想言わなくていいって」
「……あ、ごめん」
「や、謝んなくてもいいけどさ……」
 ツッコミを入れた太一にしても、新が一々コメントする理由は何となく分かる。正直そうやって脱線させないと太一自身、映像に身体が反応しかねないのだ。

 そうこうしているうちに再生される映像は佳境に入る。ほとんど画面には映らない男優の動きに呼応するように女優の唇から漏れる声も喘ぎから啼き声に変わっていき、映し出される肌がどんどん上気していく。
『んッ、あんッ、ああっ、イっちゃう、ああ───ッ!』
 ひときわ甲高い悲鳴のような声を上げた女優が大きく仰け反り、糸が切れたようにがくんと力が抜けた。蕩けたような表情がアップになると、その唇や頬に白く濁ったものがパタパタと降り注ぐ。
「……」
 年頃の男二人が言葉にならない溜め息を我知らず漏らしていると、唐突に映像が終わって何とも居心地の悪い静寂が部屋に落ちた。
「た、太一……これはちょっと、ヤバすぎやろ……おれ、当分学校やらで女の顔見れる気せんわ……」
「……悪ぃ。実はおれも、そんな気してる……。うちも共学だしなあ」
 新も太一も、何か切り替えるべき話題はないかと必死にあれこれ考え出す。

 「あー……ダメだ、ゴメン。無理に話変えようとすると、何も浮かばねえな実際」
「おれもや。さっきのビデオ凄すぎて頭真っ白や……ほうかっちゅうて(だからといって)、あんなもん試合の暗記抜きには使えんしの」
 新のその一言に太一は目が点になる。
「……マジで言ってたりしてねえよな? 記憶抜きどころか次の試合の暗記が出来ねえっつーの」
「太一かって冗談やろ、今の?」
 聞き返す新も半分真顔に見える。
「当たり前だっつの。大体ウチの部男女混成だってのに、んなモン思い出したら床から立てなくなるだろが」
「……言えてるわ」
 正直今でさえ、床から立ち上がったらお互いにバレてしまうだろう。
「こういう時男って不便だよなあ」
「丸分かりやもんな」
 顔を見合わせて小声で笑い合った。
「……ぼちぼち、寝よっか?」
「だな。結構いい時間だろもう」
 言い合って二人はそれぞれの布団に入る。電気が全て消えた新の部屋は、手を伸ばした先も見えない程真っ暗だった。
「……太一、ありがとう。……バカ話とか、おれが言ったの付き合うてくれて」
「なに礼なんか言ってんだよ、新。……おれら、友達じゃんか。……おやすみ」
 照れたのか、太一はぶっきらぼうに言葉を返す。布団が擦れる音がして、太一が背中を向けたのだと分かった。
「ほやの。……おやすみ」
 新もまた、太一に背中を向けるように姿勢を変えて目を閉じた。






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written by Hiiro Makishima