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日付が変わった時、真っ先におめでとうを言ってくれた千早がどうにも可愛らしくて、新は腕を伸ばして抱き寄せる。 「……もう一個、誕生日プレゼントねだっていいか?」 こじつけが過ぎると自分でも思わなくもないが、言い出しっぺは千早だ。 「何?」 「千早」 腕の中からの問い掛けに新は短い答えを返す。 「え……だ、だって今日、って言うか昨日から……何回も、してるのに……」 「全部、千早の言葉やろ? ……千早がおれへのプレゼントや、って。今日ぐらい言いたい事言っていい、って」 それを実行するだけだと言葉を継ぐと、抱き締められた千早は新の浴衣の身頃をきゅっと掴んできた。 新に抱きすくめられたまま、千早は少し戸惑う。 (た、確かに全部私が言った事だけど……って、言うか……) 早くも「元気」になった新が密着した身体に触れている。それに背中を押してもらうように、千早の唇から言葉がこぼれ落ちた。 「……いい、よ。私……プレゼントだから。新の、言う、通りに……する」 新の抱擁が強くなり、千早の鼓動も同じだけ早くなる。 「千早、さっきのリボンどこ片付けた? もっぺん、着けてみせて」 その程度なら抵抗はない。 「これでいい?」 一度抱擁を解いて、内風呂に入る前に鞄に片付けておいたリボンを髪に結わえて見せる。 「うん。やっぱ、よう似合うてるわ。……こっち、来て」 新が差し伸べた手の平に自分の手を重ね、逆らわず近くに座った。 「……さしずめ、包装紙やな。この浴衣」 帯が解かれ、浴衣も肩からするりと脱がされる。最後に残った小さなショーツを見た新が何故か首を傾げた。 「新……?」 首を傾げていた事を訝しんだのだろう。千早が小さく名を呼んできた。 「や、いつも思うんやけどさ。……何のために付いてるんやろ? これ」 ショーツの前についている小さなリボンを指差して新は尋ねる。 「……ごめん、私も何でだか分かんない。前後の区別なら、形見れば分かるし……何だろうね」 「履いてる本人も分からんのでは、おれが分かる訳ないな」 永遠の謎でも構わないかと新は思い、そんな仰々しい事を考えた自分に苦笑する。それを話すと千早もくすくすと小さく笑い返してきた。 (まあ『包装紙』は早いとこ外……あ、そうや) 少しばかり悪戯心を起こした新は口を開く。 「千早、自分で外して。……その『包装紙』。ここで」 告げた途端、千早の顔が真っ赤に染まる。それでもぎこちなく頷いて「プレゼント」の千早は少し躊躇いを見せた後、思い切ったように最後の一枚を膝まで下げ、布団に片手を付いて足首から抜き取った。 (……恥ずかしいやろうに。プレゼントやから、って頑張ってくれて。ほやけど……) やはりいい眺めなのは間違いない。新の鼓動が早まり、ごくりと喉仏が上下に動く。 部の先輩が冗談で寄越したらしいメールを真に受けた自分が悪いのだが、普段照れ屋な新がそんな事を言ってくるとは、と新の視線を遮るものが何一つない格好で千早は身を固くした。 (すごく……恥ずかしい……) 「……おれの浴衣、脱がせてくれるか?」 私が着ていたのは「包装紙」と言ったくせに、と少し恨めしく思うが、それでも「受け取り主」の言葉に従おうと、千早は手を伸ばして帯をほどき、新がしたのと同じように浴衣を肩から滑らせて落とす。 「えっと……全部?」 頷くのを見て、頬に朱を刷いたまま千早は新が履いているボクサーショーツをゆっくり脱がせていく。途中で新のそこに引っ掛かったりしないだろうかと少し心配だったが、何とか生地を持ち上げて腰から引き下ろし、新に脚を伸ばしてもらって言われた通り脱がせ終わったったものの、どうにも恥ずかしくて千早は顔を上げられなくなってしまった。 「今から言う事で、最後。……プレゼントな千早にはの」 胡座になった新の声が頭上から降ってきて、千早が反射的に上げた視線の先には、少しだけ照れたような顔があった。 「どうやってでもいいで、おれを……いかせてみて?」 「う、えと……が、頑張って……みる……」 そう答えるのが精一杯で、千早は耳まで紅くなった顔を見られたくないと新の胡座の上に跨るようにして抱きついた。 「……新、キス……しても、いい?」 返事通り、健気に頑張ろうとしている千早に短く応え、千早を跨らせたまま新は顔を上に向けて千早の唇を受け止める。 「……っ、んっ……」 唇を重ねる合間に鼓膜を打つ、千早のくぐもった甘い声は新の頭をくらりと揺らす。唇を一度離して新は告げた。 「キスでも何でも、千早の思う通りでいいんやで、聞かんでもいいんやよ?」 「……うん」 頷いた千早がまた唇を重ねてきた。おずおずと差し伸べられた舌先が動くのをそのままにさせると、ぞくりとした感覚が新の身体を走り抜ける。 「……っ、……」 新が息を詰めるのが聞こえたのか、千早のキスは段々と大胆になる。両手で新の耳のあたりを支え深く口付け、入り込んできた舌が貪欲に新を探ってきた。 「は……っ、……」 身体の奥に生まれた熱が、キスの合間に零れる息にも混じる。新は片手を持ち上げて千早の細い腰をしっかり抱いた。 「……だめ」 新の顔を柔らかく挟んでいた手を片方下ろし、千早は腰を抱いてきた腕を優しく引き剥がす。眼鏡越しの瞳が何故、と問うているのが分かり、千早は小さく微笑んだ。 「どうやってもいいって、思う通りでいい、って言ったの……新だよ? だから思う通りに、するの」 さっき自分に言われた口調をそのまま返すと、新の目が拗ねる。それ以上何も言わせない、と千早は新の耳にキスを落とす。 「……く、……ぅっ」 小さな呻きが新の唇から漏れる。 「新……ここ、気持ち、いい?」 一語一語を区切るように耳元で囁くたびに、引き締まった身体が小さく跳ね、それが千早を大胆にさせた。 「いっつも、さ? 新にされて、私ばっかり……感じちゃうけど……。今日は、お返し」 「ふ……っ?!」 腰から離しておいた新の腕にぐっと力が入り、さっきよりもはっきりした声を千早は拾う。 「……いっぱい、感じて?」 優しく告げると腕の力が抜け、新の顔が縦に振られた。 千早の唇が耳元に、首筋に気ままなキスを落としていく。 「っ、千早……、手、繋がせて……」 「……後で、ね」 新の言葉を却下する吐息混じりの声さえ、胸の真ん中あたりに切ない疼きをもたらせ、繋ぐ事を許してもらえなかった手をきつく握っていないと、普段の千早と同じような声を上げてしまいそうだった。 「新……」 「……っ!」 さっき腕を押さえていた千早の指先が腿を這い上がり、昂ぶったそこを撫で上げられ新はつい腰を動かしそうになる。胡座をかいているのと、千早が跨っているせいで大きくは動かせなかったが、気付いた千早が耳元で告げる。 「動いちゃ、だめだってば。……私が、してあげる」 再び指先が新を優しく撫でた。 「……、っ……あ……」 堪えきれず漏らした声は、新自身驚くほど普段耳にしている自分の声とまるで違う。録音された自分の声は何度か聞いた事があるが、どこか固いその響きともまた別な、上擦った声音が新の鼓膜に届く。 (……ほやけど、まだ……) 千早の指先や唇、そして吐息に感じているのは間違いないが、何しろ昨日の午後から何度も放った後だ。そう簡単に溢水には至らないのも自分で分かる。目の前の愛おしい贈り物をもう少し見ていようと新は決めた。 (声ぐらい、出たかっていいわ。……千早が、こんなして頑張ってるんやし……) 開き直ると多少の余裕は取り戻せ、新に抱きついている千早の柔らかみをそのまま楽しむ事にした。 |