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「……あ、お湯たまったみたい」 新に膝枕をしたまま、千早が襖の向こうに視線をやりながら口を開いた。 「流石、いい耳してるの千早は。……止めてくる」 身軽に新は身体を起こして立ち、内風呂へと向かう。千早が言った通り、浴槽の湯が縁を越えて溢れ出しているのを手早く止めながら、襖越しなのに蛇口の水音が変化した事を聞き取れる千早の聴力に改めて感心する。 「千早ー、おいでやー」 室内に呼び掛けると、千早は軽い足取りで側に寄ってきた。 「先、入りねの。だいぶ疲れたやろ?」 「いいよ、新が先で。……主役なんだからさ、今日の」 どちらが先に入るかでまた押し問答が始まる。ふと閃いて新は言い返そうとするのを止めた。 「千早、今、おれが今日の主役やって言うたな?」 「うん、言ったけど?」 「ほんなら主役の一声や。……一緒で、どうや?」 こういう形で自分の欲望をどさくさ紛れに口にするのはアンフェアかも知れないが、と思いもするが。 「……うん」 それでも千早は素直に頷き、いい加減に片手で前を押さえていただけの浴衣を肩からするりと脱ぎ捨てた。 「今日、風呂三回目やっけ?」 湯船の縁に腰掛けながら新は聞いてみる。千早は指を折りながら、これで三回目だと答えてきた。 「まあじきに日付変わるから、今日って言っていいか微妙だけど。ふやけそうだね」 クスクス笑いながら千早は浴室の椅子を引いてきて、その側に膝をつく。 「新、背中……流そうか? まあこれも主役へのサービスって事で」 新に何か言い返される前に封殺してしまおうとしてか、千早は後半の言葉を早口に付け足してきた。 「……断ったら『空気読め』とか言われそうやなぁ。……ならお言葉に甘えさせていただきます」 新はわざと丁寧な口調で返し、千早が手で示している椅子に移動した。言われた千早は可笑しそうにクスクス笑い、タオルに石鹸をつけて泡立てている。 「旅館のタオルって、泡は立てにくいよね。……家から持ってくれば良かったかなあ」 「……今に家ごと持って来なアカンくなるんでないんか、千早」 ひどいなあ、と返しながら千早は手にしたタオルで新の背中を擦り始めた。 「弱かったりしない?」 「ん、丁度いいざ。すごい気持ちいい」 誰かに背中を流してもらうなど、本当に久しぶりだと新は呟く。 「背中はこんなとこかな。……新、回れ右して」 「……え? ……や、前はいいって……自分でするで……って、うわ」 石鹸の滑りを利用して、千早は新の両肩を掴み、ぐるりと身体を半回転させてしまった。勢いがついて新の身体が椅子からずり落ちそうになる。千早の腕が素早く脇に伸びて、新の上体を支えた。 「平気?」 「……一応……」 椅子からは落ちずに済んだが、支えられたせいで千早の胸がちょうど新の目の前にあり、部分的には既に大丈夫ではないが。身体を覆う物が何一つない状況では、千早も新の身体の変化に気付いてしまう。 「……ほやで、自分でするって言うたのに……」 半ば自棄のように新は腕を伸ばし、千早の腰をしっかり抱え込むと、タオルに付いていた泡を逆側の手で掬い取り、千早の柔らかそうな胸に塗り広げた。 「っ、んっ……あ、新ぁ……。ふ、ぁ……んっ」 泡の滑りでいつもと違うのか、千早もいつもより感じやすくなっているらしい。唇から悩ましい声が漏れ、狭い浴室に響いている。泡が付いたままの指先で先端を軽く摘むと、千早の手からタオルが落ち、指先が新の肩に回される。 「石鹸付いてると、気持ち、いい?」 新の手はゆっくり下へと滑り降りていく。 「あ……っ、う、ん……いい……。新、の……指、……すごく……」 切れ切れに紡がれる可愛らしい一言を耳にして、新は首を伸ばして千早の唇を吸う。 「……んっ……ぁ、ふ……ぁ……」 キスの合間に零れる吐息だけでも、頭の中が焦げ付きそうになってしまう。新はどうにか洗面器を手に取り、浴槽の湯を汲んで床の上や自分の身体に付いた泡をざっと流す。 「……千早……しても、いい?」 耳元で問うと、千早はこくりと頷く。それに力を得て千早の腕を引いて立たせると、壁に手を付かせて背中から抱き締めた。我慢の利かない分身が千早の両足の間に潜り込もうとすると、千早がぐっと腰を反らす格好で身体を逃がした。 「この……格好、やだ……。新と、向かい合ってたい……」 「壁、冷たいざ? ……なら、ちょっと……待っての」 しぶしぶ抱擁を解き、もう一度汲んだ湯を今度は壁にかけて少しだけ暖めると、千早の身体を反転させた。 「……千早、片足……おれの腕に乗せときね」 新は腕を差し込んで千早の足を開かせると、片方の膝の裏を腕で持ち上げるようにして大きく開脚させた。少し身体を捻って位置を合わせ、熱い塊の先端で千早のそこをゆっくりなぞる。 「あんっ、やぁ……っ、新ぁ……」 千早は両腕を新の肩に回し、どうにか安定を取る。大きく開かされた脚や、その奥が新の視線に晒されている事を恥ずかしがる猶予もなく、新の熱が千早をゆっくり押し開いて入り込んできた。 「っふ、あぁっ?! ……やっ、何……っ? あ、新っ……、それ、ダメぇ……! あぁんっ、やだ……っ」 いつもと違う角度で新が入ってきたせいか、千早の感じ方も普段と違っている。 「……どう、ダメなんや……?」 可能な限り身体を近付けて、千早の耳元で新は問うた。その度に千早の中がきゅうっと締まり、細い身体が震えている。 「だって、だってぇ……っ! 新、が……。っ、すごい、いっぱい……、やぁあんっ、う、ごかしちゃ……」 実際の所、揺れているのは千早自身の腰の方で、新はほとんど腰を動かしていなかった。 「……動かすって、こうか?」 試しに軽く腰を引き、下から上に突き上げるように千早の中に再び入り込む。 「ひぅ……っ! ダメ、もうダメぇ! 新、私……っ、わ、たし……っ!」 縋る物を欲するように千早は爪を立てて新の肩にしがみついている。もっとも千早は普段から爪を短く切りそろえているから、新はさほど痛くはないのだが。 「我慢とか、せんでいいで……千早。……千早がいいの、ここ……?」 さっきと同じように腰を送ると、そこだけまるで別の生き物のように千早が新自身に絡みついて引き絞られた。 「んっ、ダメっ、ホントに……もう、もう私……っ、ダメえ、い……っちゃうっ!」 「千早、いっていいんやざ、何べんでも……」 一番鋭敏な反応を見せた内側のある一点を目がけて新はリズミカルに動き、千早をどんどん頂点に追いやっていく。 「新、新ぁ! あ、あぁあ……、──ッ!」 千早の喉から一際甲高い啼き声が紡がれ、限界まで引き絞られたそこが大きく痙攣して千早の中から蜜を断続的に吹き出させた。がくりと千早の頭が自分の方に倒れ込むのを新は身体で受け止め、注意深く抱えていた足を床に下ろす。 「……はぁ……んッ、ふ……、ぁ……」 小刻みに震えて余韻の中を漂っている千早の頭を腕で支え直し、新はゆっくり床に腰を下ろして千早を横抱きにした。 (千早、今凄かった……。さっき一回出してたで、おれ保ったけど……あれ最初やったら、千早がいく前におれがいってまうわ……) 新は千早の呼吸が落ち着くまでその体勢のまま、そんな事を思う。 「千早のが気持ち良すぎるんか、おれが単に早いだけなんか、どっちなんやろ? ……って、分かる訳ないな。お互い初めての相手やのに」 愚問にも程があると新は頬に苦笑を押し上げてから、短く呟いた。 「……分からんくて、いいんや」 腕の中の千早がようやく身じろいだ気配を感じ、新はふっと笑んで乱れたままだった千早の髪を指で梳いた。 |