保湿系トライアルセット

物をこそ思へ 6

R18版



 「……手、繋いで……?」
 新の手や唇が触れる度、千早は身体の奥から沸き上がる不思議な熱を感じ始めた。体調が悪い時のそれとは違い、生み出される熱に自分自身が押し流されていくようで、思わず片手を伸ばす。
「うん……」
 新が差し出してくれた左手に、千早は縋るように指を絡めた。自分が自分でなくなりそうな初めての感覚の中、繋いだ手はそういう自分も千早なのだと伝えてくれる気がする。
「……っ!」
 上に覆い被さっている新が身体の位置を変え、右手は千早が履いているキュロットのボタンにかかった。何度か生地が持ち上がった後、ウエスト周りがふっと楽になった事で、新がそれを脱がせたのだと分かる。
(……すごく、恥ずかしくて、心臓が破裂しそうなのに……止めて欲しくないって思う私がいる……? 何だろう、この気持ち……)
「あっ、……んっ!」
 ゆっくりと新の指がショーツをなぞり、お腹の辺りからそっと中に差し入れられた時、千早の身体の奥深くから切ないような、甘く痺れるような感覚が沸き上がった。それをどうしていいか分からず、千早は無意識に身を捩る。

 指先が辿り着いた千早のそこは凄く熱く、とろりと濡れて新の頭をちりちりと焦げ付かせた。千早を怖がらせないように注意深く探り、そっと入口を開く。
「っふ、ぁ……っ、あぁ……っ」
 艶めかしい声を上げながら、千早は新の左手を命綱のようにしっかり握りしめている。宥めるようにほっそりした腹にキスを落としながら、新は片手で千早が纏っていた最後の一枚をぐっと押し下げた。
「凄い、綺麗や……」
 初めて目にした一糸纏わぬ千早。上気した肌はうっすらかいた汗で何とも言えぬ艶を帯び、呼吸に合わせて上下する、柔らかな胸元の先端がつんと芯を持っている。

 視線を下げていくと、新の目にきゅっと引き締まったウエストや、女らしい曲線を描く腰、そこから伸びている長い脚と、その付け根が遮るものなく飛び込んで堪らない気分になる。
「やぁ……恥ずかしい……」
 繋いでいない方の手で、また千早は顔を覆う。普段の元気が弾け返るような千早とはまた違うその姿が、すっかり立ち上がっている新のそこを更に熱くさせて痛みさえ覚える程だ。
「……千早、ほんとに、いいんか……?」
 熱に浮かされたような口調で新が告げると、千早が弾かれたように目を開き、そのまましばらく新の顔をじっと見上げている。じりじりした気分で千早の答えを新は待った。
「……う、ん……」
 繋いだ手に力を込め、掠れた声で千早はようやく答えを返した。

 「ちょっとだけ、手……離すざ? ……すぐ戻るで」
 さっき薬局で買った物は本棚の上に置いたままだ。新は身軽な動作で起き上がると、腕を伸ばして買い物袋を指先に引っかけて床に落とす。そして敷き布団の上に腰を下ろすと、下着ごとジーンズを脱ぎ捨てて、パッケージの中から薄い包みと説明書を取り出してざっと目を通しながら、覚束無い手つきでゴムを被せていく。
(……うわ、何かヌルっとしてる)
 部屋の隅にあったティッシュの箱を引き寄せ、指に付いた潤滑剤をぬぐい取ってから、ようやく新は千早の側に戻る。
「……ごめんな。手、もっぺん繋ご?」
 さっきと同じように左手を差し伸べて、指を絡めると、千早もすぐに応じてきた。少しだけほっとした気分で新は千早の両脚の間に自分の脚を割り込ませて隙間を作る。
「あんまり、見ないで……」
 千早はそう言うが、目で確かめないまま千早と一つになれる自信が全くない。指先で慎重に千早の狭い入口を探し、指に添わせる格好で新は爆発寸前の自身をあてがった。

 「い……、入れてく……での……」
 探っていた右手を引き抜くと千早の脇に置いて身体を安定させた新はおそるおそる腰を進める。千早のそこは狭く、進めていく腰に抵抗が伝わった。
「……っ、う……っく、ふっ……!」
 ぎゅっと目を瞑った千早の唇から細い悲鳴が漏れる。
「痛かったら、やめるざ……?」
 そう告げた新の左手がきつく握られた。
「平気、だから……」
 いじらしい一言に涙が出そうになる。最後の躊躇を捨てた新は右手を千早の脇に差し込んでしっかり抱き締め、千早の中に自身を全て埋め込んだ。

 「あ、あぁ……っ!」
 身体の中を何かが突き抜けた感覚がして、千早は大きく仰け反った。片手だけでは足りないと、右腕で新の首に抱きついて初めての痛みを懸命に堪える。
「あ、らた……」
「……っ、あかん……っ、おれ……! 千早……っ!」
 突然、新が食いしばっている歯の音さえ聞こえてきそうな、切羽詰まった声が耳を打つ。次の瞬間、千早の中をぎっしりと満たす新のものが大きく跳ねた。
「く……ぅっ……!」
 千早の上に乗った引き締まった身体にぐっと力が入り大きく何度か震えた後、がくんと脱力して新の上体が千早の胸の上に落ちてきた。

 汗だくで俯せたまま、新はひどく荒い呼吸を繰り返している。日に何試合もある、かるたの大会の時ですら目にした事がなかったその様子が心配になり、千早はそっと呼び掛けてみた。
「新……、大丈夫……?」
 千早自身、身体の奥に鈍い痛みがあるままだが、気にしてなどいられなかった。
「……えっ……? っ、ご、ごめんっ!」
 呼び掛けが届いたのか、新が弾かれたように身体を起こす。少し驚いたが千早はもう一度大丈夫なのかと問うた。
「うん、おれは……何ともないけど、……ごめんな。その、おれだけ……いってもて……」
 バツが悪そうな顔で新が答えてくるが、そんな表情を浮かべる意味が分からず千早は仰向けのまま、少し首を傾げた。
「……や、入れてすぐとかって、さ……」
 出来れば千早の事も、可能な限り感じさせてやりたかっただけに、男として情けない気分になる、と、後始末をしながら新は時々口ごもりながら話してくれた。
「それって、今みたいにって事だよね? ……あの、さ。それって……続きとかって、で、出来る……ものなの?」
「……え? 出来る、けど……千早、無理とかしてえんか?」
 照れたように千早は笑んで、かぶりを振ってくる。本当に無理をしているかどうかまでは分からないが、他でもない自分のために言ってくれた気持ちが嬉しい。
「ありがとの」
 床の上に放り出しておいたパッケージから、もう一つ避妊具を取り出して、新は再び千早の上に覆い被さり、唇を奪った。





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written by Hiiro Makishima