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「新、さっき何か言ってなかった?」 新の肩に頭を凭れさせ、千早が問うてきた。 「え? さっきって……、ああ、千早の誕生日って、おれよりちょうど半年早いんやなっては言ったけど。……おれ十二月一日やし」 「あ、そっか。ジャスト半年違いかあ。あれ? じゃあ十二月まで、私のが年上って事?」 どうやら発想はお互い同じらしい。まさにそれを独りごちていた、と新は笑いながら言葉を返す。 「ふうん……じゃあ、私がリードした方がいいの?」 「リード? ……何をや」 「……その……こういうとこ来るとか、……こういう事」 不意に千早は身体の向きを変えて新の目の前に膝立ちになると、両手でそっと新の頬を挟んで唇を重ねてきた。 「いや、別にほんなのは年上やとか年下やとか関係ないやろ」 自分から言い出したくせに、こういう場所に千早が平然と誘って来たりするようにはなって欲しくない気はする。 新は咳払いを一つしてから話し始めた。 「……おれ、千早にはずっと千早らしいまんまで居て欲しい。ほやで、年上やでこうせなあかん、とか無理に考えんでもいいって思ってるけどの。実際、年上ったかって半年だけやし。……まあ、千早が自分の意志で何かしたいって思う分には、無茶過ぎでないんなら反対はせんつもりやけど……」 「じゃあ、取り敢えず私の意志で……新の背中、流したいんだけど」 無茶すぎでない限り反対しないと言ったばかりなだけに、遠慮も出来そうにない。新は苦笑混じりに頷くと千早に促されるままに浴室用の椅子に腰を下ろした。 「……強かったり弱かったりしたら、言ってね」 さっきの新と同じように、泡立てたスポンジを背中に滑らせながら千早は聞く。 「ん、ちょうどいい。……気持ちいいわ」 自分の手が一番届きにくい、背中の真ん中あたりをスポンジが行き来すると確かに心地良かった。 「……あっ。背中にホクロ発見!」 千早が手を止めて急に面白そうな声を上げた。 「……え? ……さすがに背中は自分で分からんなあ。……どこ?」 捻っていた上半身を戻すと、千早が「ここ」と指先で新の肩甲骨の下をちょん、とつついてくる。 「それと……ここ」 その指先が背筋をつうっと伝って少し下を示す。泡の滑りも手伝って、新の腰から首筋に向かってざわついて落ち着かなくなる感覚が一気に駆け上った。 「……っ、」 「あ、ここにもあった」 千早の指は今度は背中を這い上がり、新の片方の耳の裏を撫でるように触れてきた。 「……や、ちょ……千早?」 流石にもう新の身体は隠しようのない変化が起きてしまっている。背中はもういいから、という言葉は背後から抱きついてきた千早の柔らかみで喉に引っかかって止まってしまった。 「さっきの、お返し。……って言うか、仕返し?」 耳元で千早は小さく笑いながら言葉を紡いできた。その吐息混じりの声が新の変化をますますはっきりしたものにしてしまう。 「仕返し、って……人聞き、悪いやろ……」 言い返した途端、泡に塗れた手が頭をもたげたそこを包み込む。 「……っ?!」 咄嗟の事で新の腰が無意識に跳ねた。泡の滑りと千早の手の柔らかさが新のボルテージを一気に高め、新は自分の前髪を手でくしゃりと掴み、辛うじて声だけは上げずに堪えた。 「新……私だって、同じなんだよ? ……新のこと、気持ちよくさせて、あげたいの」 一言ずつ区切られた千早の声が畳み掛けるように新の耳から飛び込むたびに、肩や腿の筋肉が意志に反してびくんと動く。 (……あかん、こんなの我慢できる訳、ないが……) 「わ、かった……で。……ほやけど、泡だけ、流そ……?」 「……ん」 千早は片手を離して混合栓を回す。壁に掛けたままのシャワーノズルから勢いよく湯が噴き出し、雨に当たったように二人を頭からずぶ濡れにした。 「……あかん、前見えん……」 水滴で見え方がおかしくなった新は顔から眼鏡をむしり取る。慌てて千早は壁からシャワーノズルを外し、脱衣所からタオルを一枚持って戻ってきた。 「うわ、ごめんね新! タオルで大丈夫かな、眼鏡のレンズって」 言いながら新の手にタオルを乗せた。眼鏡を外した新の顔はあまり見る事がない千早は、新が眼鏡を拭いている間床にぺたりと座ってその顔をじっと見上げる。眼鏡を拭い終わって顔に掛けると、千早は視線を戻して残りの泡を注意深く洗い流した。 「どこか、流し忘れてそうなとこ、ない?」 「……ん、ないと思うざ?」 なら良いんだけど、と千早は新の前に座ったまま言うと、シャワーの水滴で濡れたままの腿にそっと自分の頬を乗せる。 「やっぱり、筋肉の質って新と私じゃ違うんだね。もの凄く張りがあるっていうか……見るからに力強そう」 感心したように言いながら、手のひらで腿の筋肉を筋に添ってなぞる。 「ほ、んなの……男と女で、違うの当たり前やろ……」 新のものがまたぞろ頭を持ち上げてしまう。間近で見たその反応に気を良くしたのか、千早の手は腿の付け根へとそろそろと這い上がってきた。 千早にしても、はしたないと思われるかもという気持ちはあるが、それでも新を良くしたいという思いの方が強い。ごくんと唾を飲み込むと、ゆっくり顔を近付けていき、唇をそっとその先端に触れさせた。 「……んっ……!」 いきなりの刺激に新の唇から一瞬息が詰まったような声が漏れた。その普段と違うトーンをもっと聞いてみたい、という思いが千早の中に生まれ、柔らかく開いた唇で先端を優しく含んでみた。 「ち……千早、それ……あかん、って……」 困惑しているような新の声をわざと無視して、千早はもう少し深く新を飲み込んでみる。 「……う……くっ……」 見る見る新の呼吸が荒くなり、口の中の新がぐっと嵩を増した。唇だけでは顎が疲れそうだ、と千早は恐る恐る舌を伸ばして露を零し始めている先端をちろり、と舐め上げる。 「……っは、……っ、千早……すごい……」 濡れた椅子の上では不安定になり、新は床に直に座った。足の方に視線を下げるとうずくまった千早が懸命に自分のものを口や舌で愛撫しているのが見え、嬉しさと切なさがない交ぜになった気分が高まる。 ちら、と背後にどれだけ余裕があるか確かめ、新は床の上にごろりと仰向けになる。出しっぱなしのシャワーのおかげで冷たくはなかった。少しだけ顔を上げ、腕を伸ばして千早の二の腕を掴んで自分の方に引き寄せようとした。 「……え?」 千早の腰が床から浮いたところで、新は腕を掴んでいた手をその細い腰に回して千早の顔が自分の爪先側に向くようにぐるりとひっくり返す。慌てて新の身体の脇に膝をついた千早は、いきおいその一番恥ずかしい所を新の目の前に曝す格好になってしまった。 「やだ、恥ずかしいよこれ……」 口にしかけた文句は薄桃色の襞を割ってきた新の舌で断ち切られる。どうにか堪えたくて、千早は自分の目の前で存在を誇示している新の幹に指を絡ませ、さっきのように口を開いて先端を飲み込んだ。 (うわ、もしかして……おれ、墓穴掘ったんでないやろか……) 千早の手と口で施される愛撫を堪えたくて取ってみた体勢だったが、直接伝わる千早の口の中の熱や物音に加えて、至近距離には淡く色づいた花が新の指や舌に反応してはとろりとした蜜を零し、しきりに新の視覚に訴えかけてくる。 「千早の、って……やっぱ、綺麗、やな……」 そう言うだけでも息が上がる。そのまま吸い寄せられるように新を誘っている千早のそこにキスを落とし、後から後からわき出てくる蜜を舌で掬うように舐め取っていった。 「……あんっ、や……それ、ダメ……っ」 千早が新のものから顔を離して悩ましげな声を上げている。 (余裕ないの、お互い様なんや……) 何となく気持ちが楽になり新は再び千早のそこに顔を埋め、自身の代わりに舌をできるだけ深く差し入れてみた。 「ふっ、……あぁんっ、あ、新ぁ……っ」 千早の手はすでに、完全に新から離れて床についている。感じているからなのか恥ずかしいからなのかは分からないが、頬に朱を刷いた顔をこちらに向けてきた。潤んだ目と、唇が半開きになった表情は新の雄としての本能を駆り立てる。 「……お願い……。もう、待て……ない……」 言っている間にも瞳に涙が滲んでいるのが分かり、新は千早の下から身体をずり上げるように抜け出して、浴室の床に膝立ちになった。 「……こう、でも……いい?」 微かに千早が頷いたのを見て、新は両手で細い腰を掴むと一気に千早を貫いた。 「ああ……っ! やだ、んっ、新ぁっ、新……っ!」 四つん這いのまま、千早の背中は彼女の中の感覚をどうしていいか分からないと言うように、何度も柔らかく反り返っている。新の送り込む腰の動きが力強さを増すと、上体を支えていた千早の腕が崩れ、浴室の床に顔を突っ伏すような格好で新に貫かれた腰だけが高く持ち上がっている扇情的な体勢になった。 「千早……、ほんなヤラシい格好したら、おれ……本気でヤバイって……」 「だって……、だってぇ……っ! もう、どうしていいか、分かんない……ッ! っふ、ああっ!」 千早の喉から絞り出されるような声は完全に切羽詰まっている。 「わか、った……。合わせる、で……」 後は歯を食いしばり、千早が達するまで必死に堪えながら新は腰を叩き付ける勢いで千早に送り込む。 「あ、ああっ、もう、もうダメぇっ! 新、新っ、お願いっ……! っ、いっ、ちゃう……ぅっ!」 「……く、っ、……ち、はや……ッ!」 どろどろに熔けた千早の中に、新の熱が最後の一滴まで迸った。 |