保湿系トライアルセット

201X0601 3

R18版



 ダブルベッドの上にそっと千早を下ろして、新もその隣に膝で這い上がった。
「……うちの布団より広いなぁ、これ」
 ついそんな事を口にしてしまう。
「でも私、新のとこのお布団って好きだなあ。どうして、って言われるとうまく言えないけど」
「……ふうん」
 どうも今日の自分は不安定になりやすい、と新は複雑な表情を浮かべた。
(石鹸の次は布団にヤキモチ妬くとか、おれ今日ほんと変やな……)
「……新?」
 千早の大きな瞳にじっと見つめられ、いつもの事だが新は正直に白状するしかなくなる。

 「笑わんといてや? ……おれんちの布団好きやって言われてさ、おれ……自分の布団に嫉妬した。今。さっきかって、千早の感じ方いつもと違ってたで、石鹸にヤキモチ妬いてもたのに……」
 千早の手が新の髪に伸びてきた。
「笑わないけど、その……さっきのは、さ……。あ、新がしたから、気持ち、良かったの……」
 真っ赤になって紡がれる言葉は新の胸を締め付ける。腕を伸ばして抱き締めると、千早の腕はそれを喜ぶように新の背中に回された。
「えっと、ね? 新……」
 腕の中で千早が呼び掛けてくる。目線を下げると、何か切り出しにくいのか口を開きかけては止め、千早にしては珍しく視線を泳がせていた。

 「どしたんや? 言えばいいざ? 思ってる事」
 なるべく急かさないように新は尋ねてみた。
「ん……。あ、のね……? きょ、今日さ……その、アレ……。着けなくても、大丈夫、だから……」
 言い終わるまでの短い間にもみるみる千早が上気していくのが合わさった肌から伝わってくる。
「……着けんかったら、おれ絶対すぐいってまうって……そういうの、恥ずかし過ぎるんやけど。男としては」
「そうなの?」
 そう聞かれると正直どう答えたものか、新には言葉が見つからない。
「んー……ほやなあ。代わりって言うと変やけど……おれからワガママ言っていいか?」
「……どんな?」
 それに答える前に新は体を入れ替えて千早の上に覆い被さり、形のいい耳に唇を寄せて呟いた。
「何回も、させてって事」
 耳元で囁かれた言葉に応えるように、千早の肩がぴくりと震え、それからようやく見上げてきた大きな瞳が頷いてみせた。

 ゆっくりと顔を寄せて、千早の唇を新は自分のそれで塞ぐ。柔らかくて甘い感触はいつでも新を熱くさせてしまうが、それは千早も同じようだった。合間に零れる吐息に再び色が混じり出す。
「……ん……っ」
 舌を差し入れると、素直に応じて新を迎え入れてくれる。それが嬉しくて新の手は千早の耳をなぞり、首筋を這ってキスの合間に千早の唇から甘い声を紡がせていく。手の平が形良く盛り上がった胸を包み込むと自己主張を始めた小さな先端が新の手のひらを軽く押し返してきた。
「あ……」
 千早の唇から漏れる声はどんどん艶を帯びて、もっと聞かせて欲しいという欲を新の胸の裡に沸き立たせる。新は身体をずらし、白い乳房のてっぺんを優しく口に含んだ。
「……っふ、ぁ……あん……っ」
 ふと悪戯心を起こして、新は赤子のようにそこを吸ってみる。
「えっ、や、それ、ダメぇ……新ぁ……」
 甘えたような声は、言葉とは全く逆の意味を伝えて寄越す。吸い上げながら尖ったそこを舌で撫で上げると、千早の背中がぐんと撓り、新の背中に回されたままだった手がずり落ちてシーツをきつく掴むのが見えた。

 「千早は、嘘つきやな」
 軽いからかいの調子を込めて新は耳元で告げた。
「っ、……なに、が……?」
「いっつも、ダメ、って言うやろ? ……ここ触ると」
 言いながらまだ唾液で濡れた胸の先を指先で軽く摘む。
「やっ、ダメ……っ」
「……ほら、言うた」
 だから嘘つきだ、と耳元で言うと千早の身体がびくんと跳ね、長い髪が左右に振られて乱れた。
「新の、いじわる……」
 甘えたような声が新の鼓膜に届く。それがどうにも可愛らしくて、新は千早の耳から唇を離さないまま言葉を返した。
「意地悪は、してえんよ? ……おれ、千早を気持ち良くしたいだけやし」
 言いながら指先を動かすと、千早の唇から零れる言葉の端々からまた余裕が失せていくのが分かる。
「あら、た……、お、願い……」
 懇願するような口調の前では新のなけなしの理性など、どこかへ飛んでいってしまう。
「……うん」
 短く答えると千早の脚を割り、その隙間に自分の身体を潜り込ませた。

 さっき浴室で一度頂点に達した後だからか、千早のそこはいつもより溢れ出る蜜が多い気がした。確かめる指先が容易く入口を探し当てる。
「んっ……」
 千早が小さく仰け反ると、新の指を迎え入れている中は、もっと奥まで欲しいとねだるようにひくりと動く。
(……ほんと何か、不思議やな……柔らかいのに、きつくて……千早が意識して動かしてる訳でもないのに……)
 新の喉仏が大きく上下した。
「……んと、気は付けるけど……痛かったら、言うてや?」
 普段はゴムに付いている潤滑油のおかげで千早に痛い思いはさせていない筈だが、そのままだと実際どうなのか新にも分からない。
「ん……でも、平気……新だから」
 短い一言に胸が揺さぶられ、今度は新の方が千早を欲しくて堪らなくなる。片方の肘で体重を支えると、入口を確かめていた指先に添わせるように張り詰めた自身の熱をあてがい、初めての時のようにゆっくりと腰を沈めていった。
「……あ、ぁ……あぁ、ん……っ」
 薄く開いた千早の唇から、徐々にはっきりした声が漏れて新の鼓膜を打つ。

 「───っ、す……ごっ……!」
 ダイレクトに伝わる千早の熱と柔らかさが新の頭の中を真っ白に灼き尽くす。
(……コンマ何ミリとか、あんなモンでほんなに違うとか、思った事なかったけど……ヤバすぎや……!)
 ぐっと膝で乗り出すように体重をかけ、千早の両脚をいつもより大きくくつろげた新は、そのまま自身を熱く蕩ける中へ一気に押し入らせた。
「あっ、や……、んっ、あ、らた……っ」
 シーツを掴んでいる千早の指先が白くなるのがちらりと視野の端に見え、新がほとんど意識しないままその手を取ると、喜ぶように千早の指は新の手をきつく掴んできた。
「……痛く、ないか?」
 それを聞くだけでもかなり意志の力が必要だった。
「ん……っ、平気……。ごめん、新……っ」
 急に千早が謝り出す。何に、とどうにか聞き返すと、千早は薄目を開けて新の顔に視線を流してきた。熱に浮かされたようなその目で見つめられて新の鼓動はいやが上にも速まっていく。
「も……余裕、ない……から、返事とか……ムリ……っ」
「……おれも、もう、聞くだけの余裕、ない、って……」
 まだ殆ど動かしてもいないのに、千早に絡み付かれて新の内圧は限界近くまで高まっている。どこまで保つか自分でも分からなかった。

 新は一度根元まで収めたものを、一旦ギリギリまで引き抜いて再び深く突き入れた。
「あぁんっ! や、だ……、ダメ、それ、ダメぇ……っ」
 千早のその言葉は逆に新を駆り立てるばかりだ。ギリっと音がしそうな程奥歯を噛みしめて堪えながら、千早の中を大きく行き来する度に、刺激的な水音と、千早の感極まった声がその我慢を手放させようと新の鼓膜から働きかけてくる。
「あ、あ……っ、新っ、新ぁ……っ」
 新のおとがいを汗が伝って落ちる。それにさえ鋭敏に反応しているのか、千早がまた長い髪を振り乱して身を捩った。
(……前に、凄く感じてたのって、確か……ここらへん、やったっけ……?)
 少しだけ膝の位置を横にずらして新は探るように腰を送り込む。
「……っ、そこダメぇ! ……あぁ、んっ! やあぁ……っ、あっ、あんっ!」
 途端に千早の口から、泣き声にも似ている切羽詰まった喘ぎが忙しなく紡がれ出す。それが新にも留めをもたらしてしまった。
「千早……っ、おれも……もう、止まらん……っ」
「あっ、や……ぁ、新ぁ、新っ! っあ……! お願い、来て……っ!」
 新の動きが限界まで早められると、千早の中がきゅうっと引き絞られて痙攣する。全身を小刻みに震わせる千早の眦を一粒の涙が伝い落ち、その光る粒がシーツに吸い込まれるのと同時に新の腰が大きく震えた。

 荒い息を吐く千早の上から身体を退かせて呼吸を楽にしてやりたいと思うのに、新の方もまだ身体に力がまるで入らない。額の汗を拭うのさえ、これが自分の腕かと思う程重たく感じる。面倒になり新はシーツに突っ伏して顔ごと汗を吸わせてしまった。
「よ、っと……」
 ようやく少し呼吸が整ったが、それでも千早の上から身体を退かせるのにはかけ声が必要ではあった。
「……千早、痛かったり、せんかった?」
 名を呼ばれた千早が薄く目を開ける。まだどこか焦点の定まらないぼんやりした瞳が新の顔に向けられた。無理に答えさせる事もない、と新は千早の頭の下に自分の腕をどうにか通し、肩をそっと抱いた。
「誕生日、か。……千早の方が、ちょうど半年早いんやな。半年だけ年上……って感じは、やっぱせんなぁ。千早らしいのは確かやけど……」
 取り留めのない事を独りごちていると、腕の中で千早が身じろいだ気配がした。

 「千早、痛いとかない? 無理させつんたかな、おれ」
 もう一度同じ事を問うと、今度ははっきり千早の顔が左右に振られた。
「……平気。けど汗びっしょり……」
「なら、風呂の湯張り直してくるわ。寝てればいいざ」
 言い置くと新は跳ね起きてバスルームに向かう。あれだけ大量にあった泡はもうほとんど消えていた。新は一旦浴槽の栓を抜き、入浴剤を全部洗い流してから蛇口を全開にして新しい湯を張る。背後のドアが軋る気配に振り向くと、千早が何も纏わないまま立っていた。
「寝てればいいって言うたのに」
「ん……何となく、近くに居たかったから」
 その一言に新は小さく笑って、千早に手を差し伸べる。
「おいでや。足元、気ぃつけての」
 新の差し出した手にそっと掴まった千早はゆっくりした歩調で新のすぐ隣にやってきた。





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written by Hiiro Makishima