No Regret --Nothing to hide-- 5
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新のキスを受け、千早の息はどんどん乱れてゆく。 「……っふ、やぁ……あんっ!」 仰け反る姿に、一体どんな感じがするのかと尋ねてみた。 「どう、言ったらいいか……分かんない。身体に電気が走る、みたいで……。でも、なんか……甘いの。すごく、甘くて……お腹の奥が、熱い……感じ、する……」 新の唇が触れると沸き上がるその感覚をどうしたらいいのか全く分からないけれど、止めて欲しいとは思わない。だから正直にそう伝えた。そう告げた時、新の腕が千早を包み込む。 「……嬉しい。おれ、下手やろけど……千早が、感じてくれてて、嬉しいんや」 「やっ、耳元……っ、感じ、ちゃう、よ……っ」 どうしていいのか分からなかった感覚を表す、新から教わったばかりの言葉が唇をついて出た。それを聞いた新の呼吸が火のように熱くなって、千早の中のその感覚が一層強まる。 新の大きな手が躊躇いがちに動き、千早の胸を柔らかく包んだ。 「こんな、柔らかいんや……。すごい、気持ちいい。……触ってるだけでも」 率直に言われるそれに、千早も同じ言葉を返した。意を決したように新の唇が触れてくる。 「あ、あ……っ、新、あらた……っ」 思わず新の髪をくしゃりと掴んだ。それが引き金となったのか、新の舌が胸の先端を舐め上げる。 「っふ、……あぁんっ、熱い、よ……」 しきりに身を捩る千早の手が新の腰から滑り、昂ぶって脈を打っているそこに指先が偶然触れた。 「……っく、ぅ……っ」 新の口から抑えきれない呻きが漏れる。 「っ、ごめん! 痛かったの?」 千早の胸元から顔を上げた新は首を左右に振る。 「……今、ものすごく……気持ち、良かったでや。千早の……指が」 さっき自分の問い掛けに対し、何も隠さず答えてくれた千早にだから、新も正直に告げた。 「さ、触って……みても、いい、かな……」 一瞬新は目を瞠る。勿体ないのは確かだが、それでも千早の上から身体を退かして新は仰向けになる。 「いいざ。……来ね」 こんな事を言う日が来るとは思っていなかったが、告げた途端心が定まった。恥ずかしくても、ありのままでいる。それを千早が望んでいるのなら。 「……うん」 さっきとは逆に千早の身体が新に寄り添い、やはり迷いはあるのか壊れ物を扱うように指がそこに触れてきた。新のボルテージはあっという間に限界近くまで押し上げられてしまう。 「すごく、熱い……ここ、って、普段から……こう、なの?」 「……っ、普段、は……違う。千、早と……こうしてるで、勃って、まうんや……」 息を詰めていないと返事すら難しい。 「ほんとに、痛く……ない?」 表情からなのか、身体に力を込めているからなのか、不安げに千早が問うてきた。 「痛い、んでのうて……。堪えてえんと……出てまう。……すぐ、いってまう」 「あ……ご、ごめん」 学校の授業で得た程度の知識だが、一応は知っている。ごめん、とまた口にする千早に切れ切れの声で、新が謝る必要はないと言って寄越す。少しだけ好奇心も手伝って、柔らかく握ってみた。 「……ちは、や……っ、気、持ち、……いい。ほやけど……保たん、もう……!」 「や、やめた方が……いい?」 こんなに息を乱しているのが心配になって尋ねると、新の手が千早に重ねられる。 「止めんで、いい……。隠さん、って……言った、やろ……」 一番恥ずかしい自分でも、千早には隠さない。そう決めたから、新は潜めた息の合間に言葉にした。───どうすれば、自分が達するのかを。新のその気持ちが嬉しくて、導かれるまま千早は手を動かす。仰向けになっている新の呼吸がますます速まり、切羽詰まった声が漏れだした。 「……っ、もう、ダメや……っ! 千早……、千早……っく、う……ッ!」 ぐっと息が詰まった直後腰が大きく跳ね、堪えていたものが迸る。熱く飛沫いたそれが千早の指を伝った。断続的に腰を震わせていた引き締まった身体は完全に脱力しきっている。短く喘いでいた呼吸が一転して深くなり、新の全身は汗で光っていた。 「ふぅ……っ」 案外早く新の呼吸が元に戻り、千早は安堵の息を吐いた。 「新……大丈夫?」 「ん? おれは何ともないざ。まあ、ちょっと、って言うか相当恥ずかしいけどの。や、千早の手拭かんと」 照れ隠しなのか、やけに早口で新は言葉を返してくる。けれど告げてくれた通り、新は何一つ隠さなかった。それが凄く嬉しくて千早の顔は綻ぶ。 「……何笑ろてるんやし」 枕元にあったティッシュで千早の手を拭きながら、新は訊く。今思っていた事をそのまま千早が答えると、頬を朱に染めながらも新は笑い返してきた。 「おれ今までって結構無口やったが? ……最近、思うんや。そういうのって、感情的やったり、無様な自分を人に見せる事が単に嫌やっただけなんでないんか、って」 元々の性格もあっただろうが、永世名人の孫として祖父の名を汚すような振る舞いは慎むべきと考えていた面もあった。言ってみれば「先生は立派だったのに、お孫さんは」と人から言われないようにと思っていた分、言葉数が少なかったのかも知れない。 以前、高校選手権の前夜に千早が電話を掛けてきたのを覚えているか、と新は言葉を継ぐ。 「あん時千早から、チーム作ったら良かったのにって言われて、団体戦は興味ないっておれ答えたけど、あれも多分、羨ましい気持ちの裏返しやったんかも知れん」 あるいは学校で呼び掛けるだけの勇気がなかった事を自分が認めたくなくて言ったのかも知れない。だが団体優勝を成した千早が泣きながら告げた言葉が新を動かした。 「ほやけど、おれは千早が好きやから。一生かるたしたい相手やから。……意見合わんくても、どんだけみっともなくても、正直になろうって決めたんや。……千早みたいにの」 そう言った途端、千早がぎゅっと抱きついてきた。 「あらた、新……っ、私も、同じだよ。新への気持ち、分かんなくなった時もあった。遠い事が、苦しいって思った事もあった。だけど、好きって言われて、一緒にかるたしようって言われて。だから決めたの」 千早は抱擁を緩めて新の顔を真っ直ぐに見つめた。 「私を……全部、新のものに……して。ううん、違う。私が、新のものに……なりたい」 「……うん」 短く答えた新が体を入れ替えた。 |