Mine Side-C 11
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もっと欲しいと答えてくれた新が一度腰から手を離し、着替えるために脱ぎかけだったワンピースを肩から滑らせて落とし、そのままブラも外して肩口にキスしてくれる。その新は何故か背後で膝立ちになった。 「千早は、背中も感じるんかな」 (背中も……って……) その姿勢のまま背筋を下から上に舌でゆっくりと舐め上げられると抑えきれない声が口をつく。 「……ふぁ、っ?! やぁ……それ、ダメ……っ」 背中が撓り、バランスが崩れかけた自分を新が腕で支えてくれた。 「寝かすでの?」 短く言われた後、千早の膝が抱えられて横抱きになる。 (こ、これって……お、お姫様抱っこ……。されるなんて思った事なかったけど……) 新に大事にされて嬉しい。そしてちょっぴり楽しい気も。抱きかかえられるまま、身を委ねた。 床にそっと横たえられた時、千早の左手をそっと取った新が薬指に優しいキスをして「社会人になったら」と言葉を紡ぎ始めた。 「ちゃんとしたの贈る。……給料の三ヶ月分、やったっけ?」 コマーシャルで聞いた事はあったが、そんなに高価な物を無理に買わなくても、と言葉を返す。 (……いくら初任給はそんなに高くないって言っても、新の就職先がどこになるかで、ものすごい値段になるかも知れないのに……) そんな事を考えていたら、千早の頭に一つ閃いた事があった。 「けど、そういうのって、ペアだよね? なら自動的に新が私のだって印にもなるんだ。……それが私の仕返しだよ」 それに新はふっと笑ってくれる。 「……仕返しにしては可愛らしいけど。他には、欲しい物とかないんか?」 問うてきた新をじっと見上げ、あるよ、と言葉を継ぐ。 「新。……今すぐに」 その「欲しい物」を耳にした眼鏡越しの瞳がさっきより優しい色を浮かべる。 「……もちろん。いつでも……いくらでも、あげる。今のそれかって、おれ、今すぐ叶えたげる」 覆い被さって深く口付けてくれた。息を乱し始めた自分に気付き新のキスは大胆になり、更に乱れさせてくる。そのままお互いの熱を高め合い、ひとつになって一緒に昇り詰めた。 翌日、新と一緒に練習場に向かうが、道場が近付くと自分の身体が強張っていく。 「だって、出水先輩全部知ってるし……顔見れる気しない……」 様子が変だと訝しむ新にそう答えた。 「言ったがの。先輩知らん顔しててくれるやろ、って」 そんな事を口にしてきた新の表情がいきなり悪戯っぽく変わる。 「おれらの事『かるたバカップル』って命名したの先輩や。バカップルらしく振る舞って何が悪いんやし?」 咄嗟に何も返せずにいると、新が言葉を継いできた。 「先輩が何か言うてくるんやったら、その呼び名撤回さすだけや」 (うわ、強気……。かるた絡んだ時の新はいつもそうだけど、今の何かちょっと違う強気さっぽかったあ……) 撤回は少し勿体ない気がするが、出水に心配させてしまったのも事実だ。 「かるたで見せようかな、もう壊れたりしないって。……だから今日は私勝つから」 「前々から言ってるがし、ほんなもん譲らんって」 「ムッカつくー。いいよ実力で叩くし」 言い合いながら道場の扉を開ける。新が言ってくれた通り、出水は少し驚いたようだが普段の挨拶に頷き返すだけで居てくれた。 練習後その出水に新が声を掛けて、ちょっとした用事の話を装って礼を述べている。出水も「何ともないならいい」と答えているのを更衣室の近くに居ても千早の耳は拾った。 (やっと思いっ切り楽しいかるた取れたし、私も後でお礼、言わないと) 「おれちょっと先輩に聞きたい事あるんですけど」 また問題発生かという出水に、ただの質問だと返す新。 「この前おれに放り投げてきたゴム。……あれどこで買ったんですか、先輩は」 (え、ちょ、新?! 何その質問?!) ドラッグストアで買った、と答えた出水は「使ったからか」とあっさり気付く。 「はい。ほやけど必需品って言うんなら、買い足し要るなあって思ったんで」 普段は千早達をからかってくる先輩が一体いくつ使ったと半ば呆れ口調で言ったそれに、新はサラっと使った数を答えている。それを聴き取ってしまった千早の耳の方が熱くなりそうだった。 この距離で聞こえていると新が気付いているかどうか分からないが、出水に対し更に畳み掛けているのも聞こえてしまう。 「……ほんなもん、すぐ使い切ってまうやろうし」 (と、止めに入りたい……) かと言って本当にあの会話に割って入るのは、新に抱かれたと白状するも同然で難しすぎた。 「お前、吹っ切れすぎにも程があるぞ……」 「吹っ切らせようって、茶室でおれに細かい事聞いたの先輩の方ですけど」 新の切り返しを聞いた出水が普段の豪快な笑い声で応えているのが聞こえる。 「……良かったな、綿谷」 「ありがとうございます。……お先です」 (……まあ、いいか……) あんな風に自分達を気に掛けてくれたのに知らない振りをしてくれたのだから、と千早は自分の鞄を両手でしっかり抱える。 「あ、新」 畳の上を歩く足音をたった今聴き取った風を装って振り向いた。 |